文献でわかったこと
種子骨軸側の骨炎は、X線DP像での種子骨の透過領域に基づいて診断されます。また、超音波検査では種子骨間靭帯および種子骨軸側辺縁の骨の輪郭を評価することが可能です。
診断麻酔で球節内または指屈腱鞘内への麻酔を行って確定しました。
腱鞘または関節鏡で骨・関節・腱鞘を洗浄またはデブリードを行い、感染性の場合は術後も2週間洗浄を続けました。
術後4-6週間は舎飼い休養し、ひき運動は術後2週間以内に開始。次の6-8週間は小さなパドック、次の4-6週間は放牧地に放しました。もとの用途に復帰できるまで中央値9ヵ月かかりました。
症例の経過としては、跛行の期間は平均3週間程度で、放牧地から急性の跛行で帰ってくることが主で、前後左右で患肢の偏りはありませんでした。主徴は球節または腱鞘の腫脹と皮下の腫脹で、種子骨の圧痛は半分で認められました。
手術では種子骨間靭帯とその付着部のデブリードメントが行われました。感染していない馬はその後に運動復帰できましたが、感染していた馬のなかには復帰できなかった馬もいました。
参考文献
目的
近位種子骨の軸側辺縁における感染性および非感染性骨炎の症例における臨床所見、X線検査およびシンチグラフィ検査所見とその成績について明らかにすること。
デザイン
回顧的研究
動物
8頭の馬
方法
医療記録から、シグナルメント、経過、馬の用途、跛行の重症度と期間、神経ブロックの結果、X線検査、超音波検査およびシンチグラフィ検査の所見および術後成績を調査した。
結果
5頭は感染所見なく、3頭は球節または指屈腱鞘の感染がみられた。全ての馬は、慢性の片側跛行の経過があった。診断麻酔の結果、5頭中3頭は球節内ブロックで歩様が改善した。2頭は指屈腱鞘内麻酔により歩様が改善した。シンチグラフィ検査は、4頭で跛行の原因部位特定に効果的であった。全ての馬で球節の関節鏡および腱鞘鏡を行うことで、種子骨間靭帯の損傷と種子骨軸側縁の骨軟化症が確認された。非感染性の5頭および感染性の1頭が術前の用途に復帰した。
結論と臨床的関連性
本調査の結果から、近位種子骨軸側骨炎はひとつの病態で、これに関連して中手種子骨間靭帯および中足種子骨間靭帯の炎症を伴うことが典型的で、これは感染性または非感染性の炎症の結果としておこる。感染がない骨炎では、関節鏡での掻爬術を行うことで、もとのパフォーマスレベルに復帰できる。