球節より近位の管骨後面には、ときどき外骨症という骨形成がみられることがあります。これまで私が経験した症例は、特にこれに関連した臨床症状がない、たまたまみつかった(偶発的な)所見にすぎませんでした。超音波検査を行った症例でも、明らかに繋靭帯など隣接する組織に干渉しているという様子は確認できませんでした。成長板の近くから発生していたため、骨形成に何らかの異常があり、遠心性に骨形成したのか?と考えていました。
しかし、このような外骨症のなかには(X線画像上、私が経験したものとは異なります)、単なる骨増生というより、骨付着部炎と定義するほうが正しいものも含まれているようです。
2012年のJAVMAに発表された文献では、管骨後面の外骨症16症例の症状、診断、治療、成績についてまとめられています。
文献でわかったこと
16頭中15頭が前肢の所見でした。競走馬5頭、障害飛越競技馬9頭、3Day競技馬2頭と激しい運動をする馬で発生しました。跛行の症状から、診断麻酔に反応したA群(9頭)と、跛行が一定でなく診断麻酔を断念したB群(7頭)に分類しました。
診断麻酔
診断麻酔の方法は、Low 4 point blockが1頭、High suspensory ligament blockが2頭、エコーガイド下での骨増生部への直接浸潤が6頭でした。
画像診断
X線検査では、骨増生の大きさはA群<B群でした。超音波検査では、骨増生は繋靭帯の分岐部(9頭)または内側脚軸側(5頭)に位置し、2頭で繋靭帯実質に異常像を認めました。シンチグラフィ検査ではA群では何の所見も得られなかった馬がいたのに対し、B群では取り込み増加が明らかな馬もいました。
治療
A群のうち、最初から外科的切除を選択した2頭と、保存療法で良化しなかった4頭の合計6頭で手術を行い、5頭で繋靭帯および腱周囲の軟部組織に損傷が認められました。術後の跛行再発は認められず、もとの運動に復帰できました。
B群は保存療法の1頭を除き無処置で、関係ない理由の2頭を除き、元通りの運動復帰が可能でした。
病理学的所見
1頭のみ手術で除去した外骨症組織を組織学的に供したところ、外骨膜に覆われた骨梁構造がきれいに配列した組織でした。このことから、種子骨間靭帯の付着部における骨増生である可能性が示唆されました。球節を過伸展したときに、この靭帯付着部に過剰な負荷がかかることが原因かもしれません。
予後
跛行を伴わない症例では、特に治療をすることもなく運動に復帰できたようです。
跛行を伴う症例では、保存療法で良化せず手術により切除した症例がいたこと、また骨増生が干渉して軟部組織に損傷が起きていたことは、跛行の原因として確からしいです。しかし、除去することで良好な予後が得られることがわかりました。