球節領域の損傷はさまざまな病態があり、微小な変化は単純X線検査だけでは検出できない可能性があります。MRIでは、骨折や骨軟骨損傷に関連した信号パターンが続々と明らかにされてきています。
はじめに
競走馬において球節を原因とする跛行は最も多く、競馬場における致命的な骨折は球節に関連するものが最も多いことが明らかとなっています。
近年、下肢部MRI検査により、X線検査や超音波検査だけでは診断できないような損傷が診断できることが報告されてきています。MRIは一般的には腱、靭帯および筋肉といった軟部組織の診断に優れていると思われますが、整形外科的分野においては、骨や軟骨の評価にも応用されています。骨挫傷や軟骨損傷は、MRIで特徴的な所見パターンを示します。
研究でわかったこと
MRIで検出された主な所見として、中手骨または中足骨遠位における内・外側顆の骨軟骨病変および傍矢状溝の矢状骨折、中手骨遠位掌側横方向の疲労骨折、第一指骨短矢状不完全骨折、骨挫傷、背内・背外側の骨片がみられた。他にも関節背側面の疾患、近位種子骨損傷がみられ、軟部組織では繋靭帯脚部または種子骨靭帯の損傷が検出されました。骨折に関連して、Bone Marrow Oedema(BMO:骨髄浮腫)パターンが認められることも明らかとなりました。
特に中手/中足骨および第一指骨の矢状骨折は、検査時点では明らかなX線所見が得られておらず、骨折線がX線検査でみられるまでには数週間を要しました。
早期に診断し、内固定手術など適切な治療を速やかに選択できる可能性があります。
参考文献
研究を実施した理由
サラブレッド競走馬において、球節は一般的な跛行の原因部位である。X線検査では、跛行の程度と一致する病態が判明しないことがある。中手/中足顆の遠位1/3または第一指骨における疲労骨折の発生率は高く、この疾患の性質から、確定診断を行うことは重要である。
目的
球節の痛みがあるサラブレッド競走馬を立位鎮静下でMRI検査を行い、その所見を記述すること。
方法
2006年10月-2010年8月の期間で、球節のMRI検査を行った馬の画像と臨床所見を回顧的に調査した。131頭、168関節を組み入れた。跛行しているまたは跛行のひどい肢でもっとも有意と思われる所見を記録した。
結果
97.8%の馬で、診断価値のある画像が得られた。最も多くみられた所見は、第三中手または中足骨の掌側または底側の骨軟骨病変で、54.9%でみられた。不完全な顆骨折は19.8%で診断され、外側顆の方が多かった。第一指骨の不完全矢状骨折は14.5%で診断され、11.4%で背側関節面の病態が診断された。他には、第三中手骨横方向の疲労骨折(1.5%)、軟部組織損傷(12.2%)、第一指骨の骨挫傷(3.8%)が診断された。症例の5.4%では、骨にも軟部組織にも明らかな所見がみられなかった。
結論
立位MRIでは競走馬の球節において、幅広い病態を検出することができる。この手技は十分実施可能で、X線検査では結論付けられなかった症例に対して、確定診断を導くことができるかもしれない。
潜在的関連性
MRIを受けた時点でX線検査では確定できなかった骨折の所見が、MRIで診断することができた症例は、全体の35.8%を占めた。これは治療や予後に関して重要な意味があり、致命的な損傷を防ぐ役に立つ可能性がある。
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