育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

大腿骨第三転子の骨折8頭(Bertoniら2013年)

大腿骨第三転子の骨折は、後肢跛行で近位部の損傷を疑う場合の鑑別診断のひとつとなる。

超音波検査で8/8が診断できた。3/3は頭外-尾内25度斜位(斜め前25度)からのX線撮影で離断した骨片を描出できた。骨折部には7/8で骨付着部症(Enthsopathy)がみられた。→蓄積された損傷と関連している?

十分な休養と制限した運動によるリハビリで、変位した骨片は線維性に癒合し、運動に復帰することが可能。

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 馬における第三転子骨折症例の経過、臨床所見、X線検査、超音波検査、シンチグラフィ検査の特徴、管理および成績について明らかにすること。

 

デザイン

 回顧的症例集

 

動物

 8頭の馬

 

方法

 2000-2012年の記録から、シグナルメント、症例の経過、跛行の重症度および期間、身体検査と跛行検査の結果、画像所見、管理方法と結果について評価した。

 

結果

 すべての馬において急性発症の跛行がみられた。8頭中4頭で骨折の局所的な身体的兆候がみられた。特異的な歩様の特徴は認められなかった。超音波検査において、頭側に変位した1つの骨片が7頭で、複数の骨片が1頭で確認できた。同時に浅臀筋の骨付着部症が7頭でみられた。立位X線検査において、頭外側-尾内側25度斜位像を3頭で撮影し、全てにおいて第三転子の中間から基部にかけて長軸方向の単純完全骨折が確認できた。2頭では跛行の原因部位を特定するために核シンチグラフィ検査を用いた。追跡調査により、骨折は骨片が頭側に変位したまま線維性に癒合することが明らかとなった。すべての馬で外科的な処置を行うことなく跛行が解消した。

 

結論と臨床的関連性

 後肢跛行の馬で近位部の損傷を疑う場合、第三転子の骨折は鑑別診断のひとつにすべきである。超音波検査で簡単に診断できるが、核シンチグラフィ検査は損傷部位を特定するのに役立つ。十分な休養期間と制限した運動を行えば、運動復帰の予後は良好である。