育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

肩甲骨疲労骨折の2頭(Davidsonら2004年)

馬における肩甲骨疲労骨折の症例は非常にまれで、ほとんど報告がありません。

この2頭の症例報告では、シンチグラフィ検査で異常が検出され、X線検査で骨折の所見が得られました。いずれの症例も、強調教後に急性の前肢跛行を認めたとのことです。立位でのX線検査では診断がつきませんでしたが、1頭で超音波検査によりほとんど変位のない不完全骨折が検出できたと記載されています。

治療は保存療法が選択され、どちらの症例も調教およびレースに復帰することができたとのことです。

 

肩甲骨も疲労骨折が検出できる可能性があり、特にこの文献では超音波検査で体表から診断できる可能性が示されています。

この大きな軸性骨格に近い骨は、その厚い周囲筋肉や組織が妨げとなり、骨折の診断を行うことが困難です。しかし、超音波検査で肩甲骨頚部や棘突起、関節上結節を観察できることが明らかとなっています。わずかな輪郭の不整や骨増生所見は、対側と比較して初めて認識できることもあり、診断時に意識して行う必要があります。

 

 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov