P1不完全骨折と診断した競走用でない馬におけるX線とCT検査を用いた骨折線の評価を行った報告です。
調査対象となったのは、ほとんどは温血種で、サラブレッドよりも少し大きいサイズ(平均576kg)、年齢は平均9.5歳でした。
CT検査では骨折形状をより詳細に評価できることや、不完全骨折が両側の皮質骨を貫かないものが多く、背掌側/背底側方向で発生部位に前肢と後肢で違いがあることが明らかとなりました。このことが単純X線だけでは診断や評価が難しいことの原因となっている可能性もあります。
骨折線の長さは平均13mmと非常に短く、見過ごされて運動を継続した場合にはより重度の骨折へと移行する可能性があるため注意が必要です。
要約
目的
競走用でない馬の第一指(趾)骨P1の近位不完全骨折の形状の特徴を明らかにし、CTとX線所見を比較すること。
研究デザイン
コホート研究
動物
P1不完全骨折の24頭
方法
2008-2013年の期間に、臨床症状とX線検査をもとに診断し、CT検査で確認されたP1近位部の不完全骨折を発症した競走用でない馬の医療記録を集めた。X線およびCT画像は、主観的なグレーディングシステムおよび骨折形状に関わる測定を行って解析した。
結果
組み入れたのは24頭の馬で、うち20頭は温血種であった。平均年齢は9.5歳、平均体重は574kgであった。患肢は前肢14、後肢10であった。跛行していた期間は平均8.7週間であった。X線検査と比較して、CT検査は骨折の検出および骨折の大きさや部位について評価するのに優れていた。CT検査上では、92%の骨折は正中矢状断面に発生していた。骨折線の近位-遠位方向の長さは、平均13mmであった。骨折線が両側の皮質骨におよばないことが多かった。前肢の骨折は、後肢に比較してより背側に発生していた。54%の症例で、近接した2本平行に走る骨折線が軟骨下骨にみられた。
結論
P1近位不完全骨折の形状にはばらつきがあり、特に背掌側/背底側方向の位置で明らかであった。CT検査により、骨折形状を詳細に明らかにすることができ、これはX線検査よりも優れていた。
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