育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

足根骨診断のための画像診断の比較(Danielら 2012年)

馬の臨床においてもMRIは関節や骨の状態を評価するのに有用であることが示されています。

飛節においてもこれは同様で、他の画像診断よりも詳細な評価が可能で、病的な所見を検出するのに優れています。

特に骨折の診断では通常の4方向のX線検査では検出できない骨折線をMRIで検出できたことが報告されています。X線検査は、撮影角度を細かくずらしていくことで検出できるほか、受傷直後よりも数日から1-2週間後に撮影することで骨折線が明瞭となることもあります。

また、繰り返し圧迫負荷がかかる足根骨では、骨硬化や骨関節炎は徐々に進行してくことが想定され、それらの評価もX線よりMRIのほうが優れているとされています。

   

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 足根関節の疼痛を原因とする後肢跛行の馬における、MRI検査で見つかった病的な所見を記述すること。この領域の評価におけるMRIの有用性を、X線検査およびシンチグラフィ検査と比較すること。

 

 デザイン

 回顧的症例シリーズ

 

動物

 20頭の跛行している馬

 

方法

 すべての馬で、飛節のMRI、X線検査(4方向)、核シンチグラフィ検査を行った。画像が揃ってない場合や、跛行が2つ以上である場合は除外した。MRIで検出できた病的な所見は、他の画像診断と比較した。

 

結果

 MRI所見のうちX線検査でも検出できた所見は、骨髄および軟骨下骨の骨硬化で16頭中9頭、骨の高信号強度は10頭中0頭、骨関節炎が8頭中5頭であった。3頭で遠位足根骨骨折の診断は、標準的なX線検査の撮影方向では検出できなかった。MRIにおける病的所見の部位には、シンチグラフィ検査で放射性薬剤の取り込み増加がみられた。しかし、シンチグラフィの取り込み増加強度とMRI異常所見の重症度とは一致しなかった。

 

結論と臨床的関連性

 馬の飛節において、MRIで検出できる骨の高信号強度、骨折、軟骨下骨の骨硬化の所見を検出するためには、X線検査は信頼がおけない。核シンチグラフィは病的な変化の部位を特定するのには効果的だが、MRIはさらに解剖学的な詳細を明らかにできる。