「心臓の大きい馬は走る」は本当か?
これを裏付けるために心臓の大きさと最大酸素摂取量との相関を評価した文献を紹介します。
“要約
馬において、最大酸素摂取量は競技パフォーマンスと相関があるようである。サラブレッド産業では、経験的な仮説でパフォーマンスと相関すると長らく考えられてきたが、これを支持する科学的な根拠はない。最大酸素消費(VO2max)と心エコーで算出した心臓の大きさの関係を調査するため、17頭の調教したサラブレッドに対してBモードおよびMモード心エコーを行った。VO2maxの数値は126-217ml/min/kgで平均±標準偏差は158±28ml/min/kgであった。年齢は2-10歳、体重は430-510kgであった。Vingmed System Vという機種で2.25MHzのプローブを用いた。全て右側からの左心室腱索レベル短軸断面を記録した。大動脈弁および僧帽弁逆流の所見は見られなかった。最大酸素摂取量は、傾斜のあるトレッドミル運動試験による標準化された方法で計測した。最大酸素摂取量は、拡張期左心室内径LVIDd(r=0.71、P=0.001)、平均左心室壁厚MWT(r=0.72、P=0.001)、左心室重量LVmass(r=0.78、P=0.0002)、左心室断軸断面積LV short-axis area(r=0.69、P=0.003)との有意な相関がみられた。体重で補正した数値とVO2maxとの相関は、LVIDd(r=0.57、P=0.01)、MWT(r=0.44、P=0.07)、LVmass(r=0.78、P=0.0002)、LV short-axis area(r=0.69、P=0.0003)であった。本研究から、ある一定の範囲のVO2maxを持つ個体について、サラブレッドの左心室の大きさの計測値とVO2maxとの間には強い相関があることが示唆された。”