育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨体部骨折 同種骨スクリューによる整復実験(Sasakiら 2010年)

同種骨スクリューは生体適合性が高く、さらに骨基質がそのまま骨へと置き換えられる(島根大学医学部整形外科学教室の研究紹介で説明されています。)という点が、このインプラントを用いる最も大きな利点です。今回紹介する文献は、帯広畜産大学にて行われた研究で、サラブレッドにおける同種骨スクリューとピンを精密に作成し、解剖体を用いて整復し、その力学的特性を検証した論文です。


In Vitro Evaluation of Allogeneic Bone Screws for Use in Internal Fixation of Transverse Fractures Created in Proximal Sesamoid Bones Obtained From Equine Cadavers
Naoki Sasaki , Jun Takakuwa, Haruo Yamada, Ryuji Mori
Am J Vet Res. 2010 Vol.71(4):483-6.

目的
 生体外における、馬の種子骨体中央部横骨折モデルに対して同種の骨スクリューおよびピンを用いた内固定の有効性を評価すること。

検体
 3歳サラブレッド種の解剖体から14の前肢を採取した。

方法
 オスのサラブレッド種の肢から同種の皮質骨スクリューを作成した。金属製の皮質骨スクリューを模してプログラムされた精密な卓上micro latheにより作成した。オシレーターを用いてそれぞれの種子骨体部に骨切りを行い、タイプⅠ:同種骨ピン(6)、タイプⅡ:同種骨スクリュー(8)、コントロール:ステンレス鋼皮質骨スクリュー(6)の3種の整復術を行った。市販の装置を用いて力学的な張力測定を行った。

結果
 それぞれの抗張力は、タイプⅠで668±216.6N、タイプⅡで854.4±253.2N、コントロールで1150.0±451.7Nであった。

結論と臨床的関連性
 同種の骨スクリューおよび骨ピンを用いた種子骨骨折の内固定は成功した。コントロールのステンレス鋼皮質骨スクリューによる固定はタイプⅠおよびⅡの整復より平均抗張力は優れていたが、コントロールとタイプⅡには有意差が認められなかった。同種骨スクリューは治癒しやすく、臨床的に問題が少ないかもしれない。