育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第三手根骨盤状骨折モデルに対するスクリュー固定の生体力学的比較(Murrayら 1998年)

通常の整形外科で用いられるAOの皮質骨スクリューは、ドリリング、タッピングを行い、スクリューを挿入します。

今回これと比較するのはハーバートボーンスクリューシステム©(Zimmer®)という種類のスクリューです。この特徴は、スクリューの軸(中心)が筒状になっていることです。これにより、ガイドピンを用いて正しい位置に骨片をとどめたままスクリューを挿入することが可能になります。また、端と端にしかねじ山がなく特殊な形状をしています。

www.zimmerbiomet.com

ハーバートスクリュー©

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”要約

目的

 馬の解剖体の腕節を用いて、第三手根骨に背側盤状骨切りを行い、内視鏡ガイド下で4.5mmのハーバートスクリューおよびAOスクリューで固定し、その剪断強度を力学的に比較すること。

 

動物と検体

 8頭の馬の解剖体

 

方法

 二重エネルギーX線吸収測定法を用いて、第三手根骨の骨ミネラル組成および密度が両側で等しいことを確認した。第三手根骨は標準的に10mm厚の盤状骨切りを行い、これを内視鏡下でハーバートおよびAOスクリューを用いて整復した。整復した骨を、装置にセットし、破綻するまで剪断負荷をかけた。

 

結果

 どちらも骨切り部の正確な整復が可能であったが、ハーバートスクリューの近位部のセルフタップスクリューを入れるのに難儀した。2つのスクリューで比較して、破綻する最大負荷、剛性、破綻の仕方に有意な違いはなかった。

 

結論

 ハーバートスクリューによる第三手根骨橈側面、背側面におきる骨折の整復は、AOスクリューで行った整復と力学的に同等の固定方法であった。第三手根骨の骨折がより厚みを持っていたときには、ハーバートスクリューの近位部セルフタップスレッドは、スクリュー自体に過剰なトルクをかけることなく設置可能である。

 

臨床的関連性

 第三手根骨背側・橈側面の盤状骨折は臨床的に非常に重要である。運動復帰するためには正確な再構築と安定化が不可欠である。”