育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

第三手根骨矢状骨折の外科と非外科療法(Krausら 2005年)

第三手根骨矢状骨折は、現在では可能な限り内固定することが推奨されています。

 

文献でわかったこと

外科と非外科療法を行い比較。治療法ごとの競走復帰率は、内固定術では7/7、骨片摘出では8/9、保存療法では7/16で、競走復帰を目指すなら手術が必要な骨折だと示唆されています。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”要約

目的

 競走馬における第三手根骨矢状方向盤状骨折に対して、外科および非外科療法を行い、競走復帰および1走あたり獲得賞金について成績を比較すること。

 

デザイン

 回顧的研究

 

動物

 32頭の競走馬(サラブレッド19頭、スタンダードブレッド11頭、アラブ2頭)

 

方法

 医療記録やX線画像を回顧的調査し、シグナルメントや治療法について情報を得た。追跡調査は競走成績の記録を得た。手術前後に1走以上している馬に関して、1走あたり獲得賞金についてロバスト回帰解析を用いて評価した。

 

結果

 治療後、22頭(69%)は1走以上した。骨折を圧迫固定術した7頭は、すべて術後に出走を果たし、手術していない馬と比較して有意に1走あたり賞金が高かった。関節鏡視下で損傷した骨軟骨を掻爬した馬は術後8/9が出走した。一方で、手術せず馬房内休養した馬は7/16の復帰のみであった。

 

結論と臨床的関連性

 研究の結果から、第三手根骨矢状方向の盤状骨折を発症した競走馬の、治療後の競走復帰の予後は良好であると示唆された。手術した馬は、しなかった馬よりも競走復帰できる可能性は高かった。”