育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨骨折とX線画像所見(Anthenillら 2006年)

サラブレッド競走馬の解剖体を用いて前肢種子骨の骨折とX線所見を解析した研究を紹介します。
この論文では、種子骨の骨折は80%が両側性に発生しており、内側種子骨は横骨折が多く、外側種子骨は斜骨折が多いという結果でした。また、種子骨炎や骨増生の所見を認めない馬のほうが骨折が多く認められました。
これらの反応は負荷に対する種子骨のリモデリングですが、骨折とは関係ないのかもしれません。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

”目的
 種子骨骨折の部位を明らかにし、背掌側X線画像との関係を明らかにすること。

検体
 328頭の競走馬で前肢種子骨を採取した。

方法
 骨増殖体、大きな血管孔、骨片の部位・方向・形状および辺縁の明瞭さを高画質の背掌側X線画像を用いてカテゴリ分類した。X線所見と骨片の特徴は、χ2乗検定およびロジスティック回帰解析をおこなった。

結果
 骨折は136頭(41.5%)で認めた。内外の両側骨折は109/136(80%)で認めた。骨増殖体は266/328(81%)、大きな血管孔は325/328(99%)で認めた。内側種子骨では横方向の完全もしくは不完全な単純骨折、不明瞭な骨折領域、1mmより太い血管孔が2本以上が多く認められたしょけんであった。骨増殖体は軸外側の翼部、基部中央または基部軸外側によくみられた。外側種子骨に多かった所見は斜骨折で辺縁が明瞭であった。X線画像で骨増殖体や大きな血管孔所見がない種子骨において、骨折のオッズ比はおよそ2-5倍高かった。

結論と臨床的関連性
 サラブレッド種競走馬の解剖体を調査したところ、内外側両側の種子骨骨折はよく見られる所見であった。内と外の種子骨では骨折に関連する特徴が異なったことは、これらの骨折の病態が異なることに関連しているかもしれない。骨増殖体や血管孔は広くみられる所見であったが、これらの所見がある骨では骨折がみられることは少なかった。”