育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨骨折のリスク因子となる運動歴や装蹄の特徴(Anthenillら 2007年)

種子骨骨折の発生リスク因子となる、日常的な管理方法は何かあるのでしょうか。運動と装蹄に関して調査した報告がありますので紹介します。結果はわりと当然といえば当然なのですが、調教やレースの長さや強さが明らかに骨折と関連していました。去勢していないオスで多いのはなぜなのか不明です。装蹄に関しては、蹄鉄のtoe grab height(蹄尖部の地面をつかむ部分の高さ)は繫靱帯支持装置への負荷を増すリスク因子として知られています。近年サラブレッド競走馬での使用は減っていて、4mm以上の高さものを使わないように推奨されていました。他の装蹄の特徴についてはよくわからないとのことでした。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”目的
 ハイスピード調教や装蹄の特徴と、前肢種子骨骨折および種子骨体部骨折との個々および複合的な関連を評価すること。

動物
 269頭のサラブレッド競走馬の解剖体

方法
 ケースコントロール研究。前肢種子骨骨折発症馬121頭(うち75頭が体中央部骨折)と、比較対象として148頭の非骨折馬を用いた。種子骨骨折の潜在的リスク因子を評価するため、単変量および多変量ロジスティック解析を行った。

結果
 非骨折馬と比較すると、種子骨骨折発症馬は去勢していないオスが多く、調教やレースをしている期間が長く、最後の休養から長くイベント、調教、レースをしており、死亡前の12ヵ月でより強い調教を受けていて、生涯の走行距離は長かった。体中央部の骨折は去勢していないオスで多く、休養から長く調教、レースしており、死亡前12ヵ月でより強い調教を受けていた。

結論と臨床的関連性
 サラブレッドにおいて、調教強度を制限したり、継続的な調教を制限したりすれば前肢種子骨骨折の発生頻度を減らせるかもしれない。”