育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

喉頭片麻痺に対する披裂軟骨亜全摘(Belknapら 1990年)

喉頭片麻痺に対する治療方法として披裂軟骨亜全摘が考案されていました。
実験的に誘導したスタンダードブレッド種馬においてこの手術を行い、効果を確認した文献がありますので紹介します。この文献では実験的に反回喉頭神経切断を行って喉頭片麻痺モデルの馬を作成し、これに対して披裂軟骨亜全摘を行って、上気道の呼吸機能および動脈血液ガスを計測してその効果を評価しました。
しかし、残念ながら機能改善には至らなかったようです。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約
馬において喉頭片麻痺を誘導し、それに対する治療法として披裂軟骨亜全摘を行った効果を評価するために、上気道のメカニクスや動脈血液ガス分析を用いた。計測は安静時およびトレッドミル上での速歩運動時に行った。トレッドミルの条件は6.38%の上り坂で、4.2m/sおよび7.0m/sの速度であった。実験プロトコルは、右総頚動脈の前置換術(この時点をベースラインとする)、左反回喉頭神経切断術および左披裂軟骨亜全摘の後にそれぞれ実施した。
ベースラインのときは、走行スピードを上げると、吸気および呼気時の流量ピーク、吸気時及び呼気時の気管内圧のピーク、呼吸回数、換気量、1分間の呼気量および心拍数は増加した。走行スピードを上げると、吸気および呼気時間は短縮、動脈血酸素分圧は減少したが、吸気時および呼気時の抵抗は変化しなかった。
左反回喉頭神経切断術後は、運動時に吸気時の流量ピーク、呼吸回数、動脈血酸素分圧は減少したが、吸気時の気管内圧、吸気時間、吸気時の抵抗は増加した。呼気時の流量ピーク、呼気時の気管内圧、呼気時の抵抗、心拍数、動脈血二酸化炭素分圧および換気量には影響がなかった。
披裂軟骨亜全摘を行っても、喉頭片麻痺によって落ちてしまった上気道のメカニクスや動脈血液ガスの計測項目には改善が見られなかった。”