育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

喉頭外アプローチによる披裂軟骨部分切除(Hayら 1993年)

現在でも披裂軟骨部分切除の主な術式は喉頭切開を行う方法だと思いますが、粘膜損傷および術後合併症の発生を抑えるために、喉頭外からアプローチする方法も検討されていました。実際の臨床例では、軸側に肉芽腫を伴う披裂軟骨炎が多いため、喉頭切開を行って目視で確認することで粘膜の状態を観察できることや、併せて声帯声嚢切除を行うことも多く、この術式が選択されることは多くないのかもしれません。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

喉頭外アプローチによる披裂軟骨部分切除は、実験室レベルおよび正常な馬の解剖体を用いて確立された。このアプローチをとる目的は、喉頭および気管切開の必要をなくし、喉頭粘膜を温存することで術後の合併症を最小限に抑えることである。
この新しい手技を、7頭の正常な上気道の馬に対して行った。手術により左喉頭片麻痺モデルを作成し、30日の術後休養期間を経て喉頭外アプローチによる披裂軟骨部分切除を実施した。左右の喉頭開口の割合を、反回喉頭神経切断術の前後および披裂軟骨部分切除の60日後で計算した。左披裂軟骨部分切除は、喉頭切開や気管切開を行うことなく全頭で可能であった。喉頭粘膜の温存および周囲軟部組織の外見上の安定化はいずれも6/7で得られた。1頭は1㎝の喉頭粘膜裂傷となったが問題なく治癒した。軟部組織のある程度の虚脱は、縫合がうまくいかなかったためにおきた。左右喉頭開口の割合の平均は、左喉頭片麻痺モデルと比較して有意に改善したが、神経切断術前と比較すると明らかに劣っていた。発咳、誤嚥、気道の狭窄は観察されなかった。喉頭外アプローチによる披裂軟骨部分切除は、正常な披裂軟骨であれば喉頭粘膜を温存して確実に実施可能であった。”