育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

喉頭蓋エントラップメントの有所見率③(Kannegieterら 1995年)

前の記事では、ランダムな対象に行った内視鏡検査での喉頭エントラップメントの有所見率について調べました。
では、異常呼吸やプアパフォーマンスを主訴に検査を行い、喉頭エントラップメントが見つかった症例はどれくらいの割合になるのでしょうか。
続けて2つの文献を紹介します。

 

文献のハイライト

この文献では、異常呼吸音またはプアパフォーマンスを主訴に検査したのは92頭でした。よって、症状を伴う競走馬の異常のうち、8/92(9.5%)が喉頭エントラップメントを原因とするものでした。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 ”要約
100頭の高速トレッドミル運動中に上気道の内視鏡検査を行った。この検査を行った理由は、運動時の異常呼吸音75頭、プアパフォーマンス17頭、上気道手術の結果の評価8頭であった。
異常呼吸音を示した75頭のうち、67頭(89%)で原因が特定できた。75頭中40頭で安静時に異常所見を認めた。この40頭に関して、安静時と運動時の内視鏡検査で同じ診断となったのは19頭だったが、残りの21頭は安静時と運動時で所見が異なっていた。所見が異なった馬のうち3頭は、安静時に異常を認めたが、運動時に異常を認めなかった。
トレッドミル内視鏡検査の所見は、喉頭機能不全がG3~5で22頭、軟口蓋背側変位DDSPが20頭、喉頭エントラップメントが8頭、喉頭蓋の震えが4頭、披裂喉頭蓋ヒダの震えが4頭、咽頭虚脱が3頭、披裂軟骨炎が3頭、声帯の震えが3頭、偽の鼻腔ノイズが2頭、咽頭リンパ過形成が2頭、軟口蓋の出血が1頭、披裂軟骨虚脱が1頭であった。
7頭で運動時に複数の異常を認めた。75頭のうち、安静時内視鏡検査のみで正しい診断ができたのは19頭(25%)であった。プアパフォーマンスを主訴に検査した17頭は、安静時および運動時においても異常所見は認められなかった。”