育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

国内の深屈腱支持靱帯炎に関する報告(JRA野村ら 2019年)

日本国内における複数頭の深屈腱支持靱帯炎について、その治療と成績を報告したものはこれが初めてです。

 

深屈腱支持靱帯炎を発症した乗用馬・競走馬の8例

JRA野村ら

2019年 日本ウマ科学会一般講演 演題番号3

 

海外の報告と同様に高齢馬での発症が多く、年齢中央値11歳であった。品種はKWPN4頭、BWP2頭、日本スポーツホース1頭、サラブレッド1頭であった。7頭は単独肢の発症、1頭はのちに対側肢にも発症した。発症時の特徴的な臨床所見は屈腱近位部側方の腫脹と帯熱で、圧痛および跛行を伴う症例もあった。診断時の深屈腱支持靱帯は、正常な馬と比較して明らかな断面積の増加が認められた。

低エコー像の消失までに中央値133日(97-215日)を要し、騎乗再開までには中央値238日(149-325日)を要した。リハビリ期間中に症状の再発が繰り返し見られ、運動制限に苦慮したことから、定期的な超音波検査にもとづく運動管理の必要性が示唆された。