育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬におけるCOX-2選択的NSAIDsの使用に関する最新情報⑤(Zieglerら 2017年)

COX-2選択的薬剤は、ヒトや小動物領域ですでに広く使用されていて、馬用の製剤も多く発売されてきました。

抗炎症薬がCOX-2選択的であることのメリット、COX非選択的薬剤との比較、その使用に関する決まりについて2017年にまとめられたものがありますので紹介します。

全文はPubmedにて読むことができますので、リンクからご確認ください。

 

COX-2選択的NSAIDsの使用は適正な方法に限定すべき

FDAは馬には馬用に製造された製剤を投与することと限定している。

・投与量が適正でないとCOX-2選択性は損なわれる。

・COX-2選択性が高いコキシブ系NSAIDsを過剰投与した結果、犬で胃穿孔が報告されている。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“馬におけるCOX-2選択的NSAIDsの使用 

米国では馬と犬でフィロコキシブの使用が認可された製剤が手に入る。馬用と犬用の製剤では値段が断然に違うので、認可外使用がよくみられ、コスト削減のために犬用の錠剤を馬に投与される。しかし、Animal Medicinal Drug Use Clarification Act of 1994によれば、動物特異的な薬物製剤がさまざまに存在するが、ある種に認可された製剤を他の種に投与することは許されていない。また、最近FDAによって57mgのフィロコキシブ錠剤が馬用に認可された。これは犬用の製剤と同様のものなので、もう犬用に認可された製剤を馬に投与する必要はない。先行研究では、馬において錠剤とペースト剤の生体内利用率は同じであることが示された。57mgの錠剤は、500kgの馬で0.114mg/kgの投与量となる。もちろん、犬用に認可された227mgの錠剤を1/4にして与えるより高くつくが、犬用の製剤を使うことは、Animal Medicinal Drug Use Clarification Actに違反する。さらにいえば、227mgの錠剤を4等分するのは難しく、半分に割るようにしかなっていない。したがって、割って与えると意図せず過剰または過小投与になってしまう。

 

馬においてフィロコキシブを使用する際の重要な懸念は、COX選択性は正しい投与量でのみ発揮されるということである。もしCOX-2選択的NSAIDsを過剰に投与すると、選択性は損なわれ、非選択的NSAIDsと同様の副作用がみられる可能性がある。たとえば、犬においてCOX-2選択的NSAIDsであるデラコキシブを推奨量より過剰に投与したところ、数例で胃穿孔がみられた。”