育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬におけるCOX-2選択的NSAIDsの使用に関する最新情報④(Zieglerら 2017年)

COX-2選択的薬剤は、ヒトや小動物領域ですでに広く使用されていて、馬用の製剤も多く発売されてきました。

抗炎症薬がCOX-2選択的であることのメリット、COX非選択的薬剤との比較、その使用に関する決まりについて2017年にまとめられたものがありますので紹介します。

全文はPubmedにて読むことができますので、リンクからご確認ください。

 

NSAIDsのCOX選択性の定義

・COX-1の指標として血液凝集のときのトロンボキサンA2(TXA2)活性、COX-2の指標としてリポ多糖により誘導される血中のプロスタグランジンE2(PGE2)活性のアッセイを行う。

・TXA2活性を50%抑制する濃度とPGE2活性を50%抑制する濃度を算出し、これらの比をCOX選択性の指標とする。

・メロキシカムは1:3-4、フィロコキシブは1:200で、選択性の違いが大きい。

・COX-2選択性NSAIDsはCOX-1に全く作用しないわけではなく、COX-2優先的というべきかもしれない。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“NSAIDsとCOX選択性

COX-2選択的NSAIDsは、むしろCOX-1温存的といったほうが適しているかもしれない。これは、NSAIDsはCOX-2選択性が高いものの、COX-1をある程度阻害してしまうからである。NSAIDsのCOX-2選択性は、全血が凝集するときのトロンボキサンA2活性のアッセイ(COX-1の機能の指標)、リポ多糖により誘導される血中のプロスタグランジンE2活性のアッセイ(COX-2機能の指標)により決定される。トロンボキサンA2活性を50%阻害する濃度と、プロスタグランジンE2活性を50%阻害する濃度から、COX-1:COX-2の選択性の比を算出する。フェニルブタゾンやフルニキシンメグルミンは、この比が1に近く、COX-1とCOX-2を同じ程度阻害することから、非選択的NSAIDsとみなされている。対照的に、馬におけるメロキシカムやフィロコキシブのCOX-2:COX-1の比は、それぞれ3-4および200である。これは、これらのNSAIDsがCOX-2を優位に阻害するが、ある程度はCOX-1も阻害することを示唆していて、特にメロキシカムは選択性が低い。したがって、メロキシカムはCOX-2選択的というよりはCOX-2優先的という単語のほうがふさわしいかもしれない。近年、獣医領域にも新しいCOX-2選択的NSAIDsが多く導入され、コキシブ系といわれるデラコキシブ、マヴァコキシブ、ロベナコキシブおよびシミコキシブがある。しかし、米国において馬で使用が認可されていて購入できるのはフィロコキシブのみである。メロキシカムはCOX-2優先的NSAIDsとして注目され、米国外の多くの国で使用されている。”