育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

ケンタッキーの1歳セリX線検査における所見率と価格との関連(Prestonら2010)

北米の大規模な1歳セリである、キーンランドセプテンバーセール1年分について、レポジトリX線検査所見、セリ前の関節鏡手術およびセリ価格についての関連が調査されています。

ここでは、球節の第一指骨の骨片があると価格が低かったという結果が示されました。この骨片が明らかに競走能力に影響があるとは思えませんが、価格には影響があったとされています。能力に影響があると思われる所見は、症例数が少ない可能性もあるので、さらに多くの頭数を調べれば差が出るのか気になるところです。

一方で関節鏡手術を受けた馬は価格が高かったという結果となりました。これは馬そのものが良いこともありますが、早期にOCDなどを発見して摘出しておくなど、牧場の知識や管理が評価されているのかもしれません。

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

目的

 2006年のキーンランドセプテンバー1歳セールに上場された馬における、X線検査の所見率および関節鏡手術を行った率を明らかにすること、X線所見の有無および関節鏡手術歴の有無でセリ価格を比較すること。

 

動物

 397頭のサラブレッド1歳馬

 

デザイン

 横断的研究

 

方法 

 セリ前のX線検査および健康手帳から、種々のX線所見と関節鏡手術について調査した。セリ価格の記録から、X線所見と関節鏡手術の有無でセリ価格を比較した。

 

結果

 前肢で最も多く認められた所見は近位種子骨の血管孔(23%)で、他に橈骨手根関節の骨棘(22%)、第三中手骨矢状稜の骨軟骨症病変(20%)も多く認められた。後肢では近位種子骨の骨棘・骨増生(39%)、第三中足骨の遠位背側面の異常(36%)、遠位足根間関節の骨棘(27%)、膝関節の骨軟骨症病変(8%)が認められた。13%の馬でセリ前に関節鏡手術が行われていた。第一指骨の骨片がある馬では、所見のない馬よりセリ価格の中央値が有意に低かった。セリ前に関節鏡手術を受けた馬は、受けなかった馬と比較してセリ価格の中央値は有意に高かった。

 

結論と臨床的関連性

 本研究の結果から、サラブレッド1歳馬において、第一指骨の骨片、セリ前の関節鏡手術、セリ価格には有意な関連があることが明らかとなった。