先の特集でも考察で言及されていましたが、繫靱帯脚部の評価は難しく、超音波検査も完全ではないです。その点について根拠とされている論文の要旨紹介です。
P. H. L. RAMZAN L. PALMER R. S. DALLAS M. C. SHEPHERD
”臨床症状のない繫靱帯脚部の超音波検査異常所見:60頭のサラブレッド種競走馬の調査
研究を実施した理由
繫靱帯脚部の超音波検査異常所見はこれまでにあまり調査されていないが、競技馬においてこれは市場価値やキャリアに大きく影響する。そこでサラブレッド種競走馬における超音波検査異常所見と臨床的な損傷や罹患率を調査する必要がある。
目的
英国のサラブレッド種平地競走馬において、前肢の繫靱帯脚部の臨床症状のない超音波検査異常所見の罹患率およびグレード分類の再現性を求めること。
方法
英国のサラブレッド種競走馬の単一の調教場において、繫靱帯脚部の臨床的な損傷のない60頭の前肢の繫靱帯脚部の超音波検査を実施した。2人の検査者が独立して超音波検査画像を回顧し、異常をグレード分けした。
結果
中程度の前肢繫靱帯脚部の超音波検査異常所見は6.7%で認められた。内側脚部が多かった。検査者間の一致は異常所見のグレード分けで確認でき、種子骨付着部の所見ではほぼ完ぺきであった。
結論
英国のサラブレッド種平地競走馬で繫靱帯炎の臨床所見がない馬には、いくらか超音波検査異常所見を認める馬がいて、市場価値やキャリアに負の影響を与えることがある。
潜在的関連性
臨床医は超音波検査で異常所見を認めても、それがすべて臨床的な靱帯炎であるとはいえないことに注意すべきである。この所見が将来の損傷を予期するものかどうかは、さらなる長期的な調査が必要である。”
平地競走馬ではこれがメジャーな研究ですが、障害競走馬や障害飛越競技馬での報告もあります。また1歳のサラブレッド競走馬での報告もありますので、また次回紹介します。