喉頭形成術と声帯声嚢切除を行った馬の長期術後経過を調査した文献のパート2、馬主に対して手術満足度を聞き取り調査した報告を紹介します。調査対象は雑種馬で、競走馬でないものも多く含まれています。
”研究を実施した理由
馬の喉頭麻痺の治療において喉頭形成術の臨床的利点についてはいまだに議論が続いている。特に、老齢馬やサラブレッド以外、スポーツホースやプレジャーホースについての情報はほとんどない。また披裂軟骨外転の程度と喉頭形成術の臨床的価値の関係もあきらかになっていない。目的
老齢で雑種、さまざまな用途の馬における喉頭形成術の価値を馬主に判断してもらうこと。披裂軟骨外転の程度と喉頭形成術の臨床的価値の関係を評価すること。方法
1986-1998年に喉頭形成術および声帯声嚢切除を行った200頭の馬について調査した。披裂軟骨外転の程度は準定量的に5段階のグレーディングで評価した。結果
198の馬主に対し、術後中央値19ヵ月の期間で追跡調査を行った結果、91%は完全な運動に復帰し、3%は低いレベルの運動に復帰した。これらの披裂軟骨外転の程度は、術後6週間でG2の馬が95%、G3の馬が91%、G4の馬が88%、外転が完全に消失しているG5の馬が25%で運動できた。運動復帰した馬では、73%が運動時の異常呼吸音は消失し、21%は運動時の異常呼吸音を認めたが音は減っていた。残りの6%は異常音に気づいていなかった。運動に復帰した馬の運動時異常呼吸音があるかどうかは、術後6週間の披裂軟骨外転の程度と有意な相関があった。運動に復帰した馬のうち、スポーツホースやプレジャーホースは76%で異常呼吸音がなく、競走馬では60%で異常呼吸音がなかった。術後の運動パフォーマンスは、75%の症例で顕著に向上した。10%は変化なく、3%はパフォーマンスが低下し、13%はわからないとの回答であった。スポーツホースやプレジャーホースでは70%、競走馬では67%が改善した。全体では、馬主の86%が手術は価値のあるものと回答し、7%は価値がない、6%は分からないと回答した。スポーツホースでは最も効果があった(つまり障害飛越競技馬では100%が有効だったと回答した)が、ナショナルハント競走馬(障害の長距離レース)では71%の満足度にとどまった。結論と潜在的関連性
ほとんどの馬主が、喉頭形成術および声帯声嚢切除は臨床的価値があると考えていて、特にスポーツホースやプレジャーホースでよく聞かれた。より手術の価値を明確にするためには、臨床例で術前および術後を観察した大規模な生理学的研究が必要である。”