育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

トレッドミル内視鏡検査での動的気道閉塞の診断 パート1(Laneら 2006年)

運動時の内視鏡検査について大規模な調査を行った報告を紹介します。検査条件を統一できる高速トレッドミル内視鏡検査を用いて、プアパフォーマンスを主訴に来院した600頭のサラブレッド競走馬について調査した文献です。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”研究を実施した理由
 プアパフォーマンスの原因調査を目的に紹介来院した大規模な競走馬のグループにおける単独または複数の動的な気道閉塞の罹患率を調査すること。

方法
 600頭のサラブレッド競走馬について、標準化されたトレッドミル運動試験中の上部内視鏡検査動画を調査し、リアルタイムとスローで動的な喉頭の虚脱などを解析した。

結果
 鼻咽頭喉頭に動的な虚脱を認めた馬は471/600であった。最も多い異常は、軟口蓋背側変位DDSPが50%、軟口蓋の不安定が33%であった。嚥下は軟口蓋背側変位の発症のきっかけではなかった。30%は複数の上気道疾患が併発していた。軟口蓋背側変位および動的な喉頭虚脱と年齢の間に有意な相関が認められた。若馬では軟口蓋背側変位のリスクが、年齢が増すほど動的な喉頭虚脱のリスクが増加した。性別や競走の様式との相関は認められなかった。

結論と潜在的関連性
 軟口蓋の不安定や軟口蓋背側変位は、本研究のサラブレッド競走馬においてもっとも多いタイプの動的な喉頭虚脱であった。これらは同様な鼻咽頭の機能不全を示した。少なくとも一つ以上の気道閉塞が併発することはよくある。したがって単一の異常に対する治療を行ってもうまくいかないことが多い。若い馬では軟口蓋背側変位のリスクは高かった。一方で年齢が上の馬では声帯虚脱のリスクが高かったが、単独での披裂軟骨虚脱は多くなかった。”