育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

反回喉頭神経症の進行を運動時の内視鏡検査で確認した3例(Davidsonら 2007年)

現在では、喉頭片麻痺(反回喉頭神経症)は進行性の病態であると考えられています。病態が進行する速度や、いつ症状が現れ始める時期は馬によって異なります。順調な競走成績が得られていても、ある日から急激にパフォーマンスを落としてしまう可能性もあるということです。いくつかの発症に関係する要素はわかってきているものの、反回喉頭神経症の進行を完全に予測することはできません。したがって、1歳のセリ時に問題がないレベルと判断された馬であっても、この病気が出てくる可能性はゼロではありません。

今回は現役の競走馬において、運動時の内視鏡検査を経時的に行って、反回喉頭神経症の進行を確認した3例の報告を紹介します。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”症例
 上気道を原因とする運動時の異常呼吸音とプアパフォーマンスが原因で検査した競走馬3頭

臨床所見
 最初の運動時内視鏡検査では、最大強度の運動時において、2頭で披裂軟骨の完全な外転を、1頭で不完全ではあるが十分な外転を認めた。しかしその後の運動時内視鏡検査では3頭すべてで完全な披裂軟骨と声帯の虚脱を認めた。

治療と成績
 2頭は喉頭形成術を行い競走できた。1頭は引退した。

臨床的関連性
 特発性の喉頭片麻痺は進行性の病態である。3頭で、左喉頭片麻痺の進行を、連続的な運動時内視鏡検査によって確認した。上気道の機能不全の兆候を示す馬では、運動時内視鏡検査を考慮すべきである。”