馬の胃潰瘍は、その一連の検査所見や症状から、馬胃潰瘍症候群EGUS:Equine Gastic Ulcer Syndromeと呼ばれるようになってきました。
ヨーロッパの大学の馬内科医による成馬の馬胃潰瘍症候群EGUSに関する合同声明が2015年に発表されていますので、これについて少しずつ書いていきます。
なお、Pubmed、JVIMから全文を読むことができますのでリンクよりご確認ください。
“罹患率
胃潰瘍の罹患率は、血統、使役、トレーニングのレベルによって異なり、ESGDとEGGDでも異なる。サラブレッド競走馬におけるESGDの罹患率は未調教馬で最も高くて37%だったが、2-3ヵ月のレースに向けた調教を行うと80-100%に増加した。スタンダードブレッド競走馬でも同様に、全体のESGD罹患率は44%であったが、調教している馬では最大87%まで増加し、ショージャンプやスポーツホースでは17-58%、プレジャーホースでは37-59%の罹患率であった。エンデュランス競技馬では、競技外の時期で48%、競技期間中は66-93%、成績が優秀な馬ほど罹患率が高かった。競技にほとんど参加せず、家で飼われているだけの馬では11%の罹患率であった。
EGGDの罹患率は、まだよくわかっていない。オーストラリアのサラブレッド競走馬における報告では、47%と65%との罹患率とされている。エンデュランス競技馬では、競技外の期間で16%、競技期間中で27-33%とされている。英国における回顧的調査では、191頭のレジャーホースで54%、493頭のスポーツホースで64%の罹患率が明らかとなった。また、2つの異なる調査でも、様々な用途の馬において57%と同じ程度の罹患率が報告されている。これらの調査では、ほとんどのEGGDは幽門洞部に認められた。”