育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

ヨーロッパ馬内科医による成馬の胃潰瘍症候群についての合同声明①(Sykesら 2015年)

馬の胃潰瘍は、その一連の検査所見や症状から、馬胃潰瘍症候群EGUS:Equine Gastic Ulcer Syndromeと呼ばれるようになってきました。

ヨーロッパの大学の馬内科医による成馬の馬胃潰瘍症候群EGUSに関する合同声明が2015年に発表されていますので、これについて少しずつ書いていきます。

なお、Pubmed、JVIMから全文を読むことができますのでリンクよりご確認ください。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“用語について

 馬胃潰瘍症候群EGUSは、1999年に初めて馬の胃潰瘍を表すために用いられた。しかし、Merrittらの議論によれば、この単語は広く誤用されている。専門委員会は、腺部と無腺部の潰瘍を区別する重要性を強調していて、この2つには重要な違いがある。

 

 ヒト医療では、胃のびらんや潰瘍疾患を指す総称として、消化性潰瘍疾患PUD:peptic ulcer diseaseという病名が用いられる。これには異なる疾患が多数含まれることが認識されている。病態生理や治療計画にいくらかの共通点があっても、ヒト医療では特定の疾患をその他の疾患に外挿することは不適切である。

 

 

 専門委員会は、EGUSという単語が指す内容を明確にする必要があることを認めていて、EGUSは、ヒト医療におけるPUDと同じで、胃のびらんまたは潰瘍を総称して呼ぶ単語と提言している。無腺部胃潰瘍ESGDおよび腺部胃潰瘍EGGDは、その領域を表現した呼称である。 

 

 ESGDのなかでも、原発性と二次性が知られている。原発性のESGDはより多いが、正常な腸管でもおきうる。対照的に、二次的なESGDは、幽門狭窄などによる胃の排出障害からおきる。EGGDの病態生理にはまだ解明されていない部分があり、現時点で細かい分類はできない。かわりに、専門委員会としては、解剖学的な部位および肉眼的な損傷の様子から分類することを推奨している。研究や臨床所見をやり取りするにあたり、胃内の損傷がみられる領域を明確にしておくことが重要である。”