育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬におけるCOX-2選択的NSAIDsの使用に関する最新情報②(Zieglerら 2017年)

COX-2選択的薬剤は、ヒトや小動物領域ですでに広く使用されていて、馬用の製剤も多く発売されてきました。

抗炎症薬がCOX-2選択的であることのメリット、COX非選択的薬剤との比較、その使用に関する決まりについて2017年にまとめられたものがありますので紹介します。使用に関してはあくまでも米国内、FDAのルールに基づいて書かれたものです。

全文はPubmedにて読むことができますので、リンクからご確認ください。

 

なぜCOX-2選択的NSAIDsが生まれたのか。

・生体内のCOXには生理学的特徴の異なる形(アイソフォーム)があり、それぞれが担う役割は異なっている。

・普段から生体の維持にかかわるのはCOX-1、炎症に関連して増加するのはCOX-2。

・炎症を抑えて生体への副作用を減らすにはCOX-2だけを標的にすればよい。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“NSAIDsは疝痛や変形性関節症などの馬でよくみられる疾患の治療に非常に効果的である。NSAIDsの抗炎症作用は、COXを阻害した結果もたらされる。しかし、これまでの研究で、COXには複数のアイソフォームがあり、それぞれに生理学的な発現や機能が異なることが示されてきた。その結果、炎症に関連して誘導されるCOXのアイソフォームであるCOX-2に的を絞って阻害することが可能なCOX-2選択的薬剤が開発された。

 

COX-2選択的NSAIDsは、骨関節炎の疼痛や炎症を治療することを目的として、ヒト用の薬剤として市場に出回った。COX-2選択的NSAIDsの主な利点は、非選択的なNSAIDsと比較して消化管への副作用を減ずることで、これはCOX-1の活性を損なわないように保つからと想定されている。ヒトではこれらの薬剤が変形性関節症の治療を改善することが約束されているが、2つのCOX-2選択的NSAIDsは、予期していなかった心血管および血栓塞栓の副作用が判明した。これは理論的にはCOX-2の阻害による血管拡張作用を持つプロスタグランジンE2の濃度低下、COX-1が阻害されないことによる血栓形成作用を持つトロンボキサンA2の持続的産生による。結局これらの薬剤は市場から自然に姿を消した。

 

馬でも同様に、非選択的NSAIDsによる消化管の副作用は出やすいことが知られているが、ヒトで見られるようなCOX-2選択的NSAIDsによる心血管系の副作用になりやすいとは示されていないことから、これらの薬剤は馬では安全に使用できることが示唆されている。現在では、馬においてCOX-2選択的NSAIDsであるフィロコキシブが使用を認可されている。しかし、馬においてフィロコキシブを使用する臨床的な利点は完全に理解されておらず、近年では小動物用のフィロコキシブ製剤が馬において認可外使用されているという法的な懸念が明るみに出ている。”