育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

健康な若馬の生理学的弁逆流症(Marrら 1995年)

臨床症状のない若い競走馬でも、高確率で雑音は聴取されるし、カラードップラー心エコーをみればそれぞれの弁について小さな逆流血流が検出されることが分かっています。小さな心雑音は病的な状態を原因とするものばかりではなく、大きな心臓を持つ馬の生理的特徴でもあります。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

“要約

15頭の馬について、カラードップラー心エコー検査を行った。内訳は、サラブレッド10頭、スタンダードブレッド5頭。オス9頭、セン5頭、種牡馬1頭。年齢は平均3.4歳±1.1歳であった。12頭(80%)で心雑音が聴取されたが、すべて機能的雑音の特徴と一致した。標準的なBモードおよびMモード画像検査で、特筆すべき所見はなかったが、大動脈弁の逸脱が3頭、三尖弁の逸脱が2頭、僧帽弁の逸脱が1頭で認められた。カラードップラー心エコーにて、ほとんどの部位に層状の逆流血が描出されたが、なかには右室流出路におけるばらつきがみられた。小さな逆流ジェット血流は、大動脈弁で12頭(80%)、三尖弁で7頭(46%)、肺動脈弁で4頭(26%)、僧帽弁で4頭(26%)の所見を認めた。他の動物種と同様に、カラードップラー心エコー検査では正常な馬の多くで小さな逆流血流が検出された。”