“要約
背景
大動脈弁逆流症ARは、臨床的に重要なことがあり、なかには左心不全を引き起こすこともある。組織ドップラー画像TDIは、馬において左心室の機能不全を検出するために用いられている心エコー検査技術である。
目的
AR症例とコントロールを比較し、心筋の軸側方向の動きの変化をTDIで検出できるか評価すること。
研究デザイン
ケースコントロール研究
方法
温血種を用いて、健常な30頭とAR症例34頭について、心エコー検査を行った。AR症例はその症状から軽度、中程度、重度に分類した。左心室の心筋壁短軸断面を6分割して、それぞれにTDIによる計測を行った。心室壁の動きは、等容性収縮、収縮、拡張早期および拡張後期について、速度と変形を計測して評価した。イベントがあれば記録した。
結果
ARとコントロールを比較すると、ほとんどの部位で収縮期の心筋速度の有意な増加を認めた。拡張後期にも速度増加を認めたが、全ての部位で有意な差があったわけではなかった。群間でタイミングの間隔にはTDIによる計測に差はなかった。
主な制限
コントロールとAR症例では年齢に明らかな違いがあり、結果と交絡している可能性がある。ARの重症度評価は主観的な基準に基づいており、ゴールドスタンダードとされる方法はない。
結論
TDIにより、AR症例では収縮期および拡張後期の軸側方向の心筋の速度に有意な差が示された。これは、AR症例における左心室機能の変化を示唆しているが、この測定値が予後指標としての価値を調査するためのさらなる研究が必要である。”