育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

アザチオプリンを用いた馬免疫介在性血小板減少症の治療(Humberら JAVMA1991年)

 

はじめに

血小板とは

血小板は体内で1日当たり35,000/µL産生され、4-5日で破壊・回収されます。

血小板は、止血機構の主要な細胞です。しかしそれだけではなく、様々なメディエーターを産生することにより、炎症、っ芽根季、組織再生、さまざまな疾患の病態形成にもかかわっていることがわかってきています。 

アニメでも重要な役割でしたね。

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血小板減少症

血小板減少症となる主な要因は、血小板の消費過多、血小板の産生低下、血小板の破壊です。

最も多い要因は血小板の消費過多と破壊で、これは原発となる全身性の疾患から二次的に発生することがほとんどです。壊死性または絞扼性の腸管疾患や腸炎、腫瘍、DICなどでも血小板が急激に消費されることで血液中の血小板数が減少します。

 

免疫介在性血小板減少症

まれに免疫介在性血小板減少症があることも知られています。本来、自己の細胞である血小板は免疫寛容のなかにあり、破壊されることはありません。しかし何らかのきっかけで血小板の抗原に対する抗体が産生される、血小板と結合したタンパク質に対する抗体が産生されるなどして、血小板が免疫細胞の攻撃対象として認識されてしまうことがあります。

 

  

文献でわかったこと

アザチオプリンとは

アザチオプリンはプリン代謝拮抗薬で、細胞内の核酸合成を抑制します。細胞代謝を抑制し、リンパ球をはじめとする免疫細胞の活性を低下させます。自己免疫性疾患である、潰瘍性大腸炎膠原病、自己免疫性肝炎などの治療や、臓器移植の拒絶反応を抑える目的でも用いられます。

一方で全身の細胞代謝を抑制するため、副作用として骨髄抑制や肝毒性もあることが知られています。 

 

免疫介在性血小板減少症の治療法

糖質コルチコイド単独で治療できなかった2頭に対して、免疫抑制剤であるアザチオプリンを投与した。

1頭は治療成功し競走復帰したが、1頭は腎不全と軽度の蹄葉炎を発症し安楽死となった。 

 

参考文献

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov