育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

橈骨掌側の骨軟骨腫を関節鏡下で除去した1例(Squireら JAVMA1992年)

橈骨掌側(尾側)の骨軟骨腫とは

橈骨掌側に形成される骨軟骨腫は、成長板付近の骨軟骨を原因とする外骨症や良性腫瘍と呼ばれることもありますが、明確な定義はありません。

骨軟骨腫の形状は様々で、トゲ状のものからドーム状のものまでさまざまです。これが前腕尾側を走行する屈筋腱に当たって擦れることが障害の原因となります。

腱鞘内で擦れて炎症が起きた場合は出血と腱鞘液の増加を呈し、手根管症候群の原因となります。腱鞘の腫脹、様々な程度の跛行、患肢の屈曲痛を呈すことがあります。

 

文献でわかったこと

橈骨掌側に形成される骨軟骨腫は、手根管腱鞘炎の原因の一つとなる。

骨軟骨腫が屈筋および屈腱に衝突しているかどうかは、超音波検査を用いて確認することができる。

腱鞘鏡下の操作で、骨軟骨腫を切除することができる。

術後2ヵ月で症状は解消し、術後4ヵ月でトレーニングに復帰できた。

 

参考文献 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

要約

 5歳のアラブ種の種馬が、中程度の手根管腱鞘の腫脹と間欠的な跛行を呈した。橈骨の遠位から形成され、手根管に突出した骨軟骨腫が診断された。この馬はすでにフェニルブタゾンの経口投薬により、3年間は活動を続けることができた。 跛行が再発し、超音波検査で深指屈筋腱に骨軟骨腫が衝突している像が確認できた。馬主は骨軟骨腫を外科的に切除することを選択した。馬は全身麻酔し、まず手根管腱鞘を電解質液で膨満させた。4mmの関節鏡を腱鞘内に挿入し、骨軟骨腫が腱鞘内に突出しているところを確認した。直上の腱鞘に小切開を加え、骨軟骨腫は骨ロンジャーを用いて除去した。術後2ヵ月以内に跛行と腱鞘の腫脹は解消し、術後4ヵ月で運動に復帰した。