調査で分かったこと
脛骨疲労骨折の診断・検出に優れている核シンチグラフィですが、これは骨代謝および炎症が活発な部位に放射性医薬品の取り込みが増加することを利用しています。
取り込まれる放射性医薬品を定量的に評価するため、関心領域内の画像ピクセルあたりの取り込み増加をカウントし、これを内在コントロールで割って比率にしたものを比較する試みがなされていました。疲労骨折の局所が、正常と思われる脛骨骨幹部に比較してどのくらいドットが集積しているか、数値化することができます。似たような方法では、エコーにおけるヒストグラムなどがあります。
この調査では、症例と比較して診断に有用そうなことは分かりましたが、ドットの比率は治療やパフォーマンス成績とは関連しないことがわかりました。リハビリテーションを経て数値がどのように変化するかは今後の課題としています。
参考文献
目的
脛骨疲労骨折のあるサラブレッド競走馬の脛骨シンチグラフィを定量的に評価する方法を作り、骨折を診断できるようにすること、骨折発症馬の将来のパフォーマンスに関する予後を提示すること。
動物
35頭のサラブレッド競走馬
方法
静的な骨のフェイズのシンチグラフィを脛骨疲労骨折について定量的に解析した。方法は、関心領域内のピクセル当たりの平均カウントを行い、疲労骨折領域と正常領域の比をとった。片側の骨折の場合は、骨折している肢で骨折部と正常部の関心領域を設定し、対側肢の同じ領域を2ヵ所設定して評価した。この比の比較は、骨折部と正常部、競走復帰した馬としなかった馬、跛行のグレード間で行った。骨折した脛骨の比と、診断までの期間および競走復帰までの期間の関連を調査した。
結果
見かけ上正常な脛骨の関心領域内の平均比は1.35(95%信頼区間1.21-1.50)で、疲労骨折のある脛骨では平均比が3.55(95%信頼区間2.50-4.60)であった。このふたつには有意差が認められた。骨折した脛骨の比と、跛行のグレードおよびパフォーマンス成績との間に有意な関連は無かった。
結論と臨床的関連性
脛骨疲労骨折はシンチグラフィで定量的な解析が可能である。この方法による評価が使えるかどうかは、リハビリ期間における前向きな調査が必要である。