育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

馬のプアパフォーマンス:整形外科以外の診断について(Ellisら2022) ⑫筋肉 その他の筋疾患

プアパフォーマンス

馬におけるプアパフォーマンスの原因は様々です。まず思いつく原因として、整形外科的な疾患では関節炎や腱鞘炎、疲労骨折など疼痛や機械的な障害を伴うものがあります。ですが、他にも様々な呼吸器、循環器、消化器および筋肉の疾患があります。

 

まずは慎重な症状の聞き取りと身体検査が重要となります。ここで示す症状が呼吸器症状か、循環器症状か、歩様異常か、消化器症状かを大別します。そこからさらに詳しく分類し、それぞれ診断するための検査に進みます。

 

 

 

骨格筋が原因の場合

その他の筋疾患として気を付けなければならないのはビタミンE欠乏性ミオパチーと運動ニューロン病です。これらは食事中のビタミンE欠乏を原因とする疾患です。ビタミンEは脂溶性ビタミンのひとつ(脂に溶けるのはこれD・A・K・E☆よ♡)です。

ビタミンEは強い抗酸化作用を有する微量元素で、運動時には要求量が増加します。天然のビタミンEは青草、穀類胚芽、植物油などに多く含まれており、非常に吸収性が高いことがわかっています。青草に含まれる天然のビタミンEであるαトコフェロールは不安定で、比較的はやく分解が進んでしまいます(乾草では収穫後1か月で50%失われるとされる*1)。したがって、乾草と穀類のみを給餌されていると不足しがちとなり、飼料添加物から供給しなければいけません。

この疾患では全身性の筋委縮や筋力低下がみられますが、ビタミンEを供給することにより症状が改善します。血中ビタミンE濃度の低値が見られない症例もあるため、この結果から除外診断することはできません。

 

 

 

参考文献