育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

サラブレッド競走馬における無腺部胃潰瘍の横断的研究(Vatistas1999)

調教しているサラブレッドのほとんどが胃潰瘍を持っていることはこれまでに多くの調査で明らかとなってきています。では、その具体的な影響はどうでしょうか。 この調査では、調教しているサラブレッド競走馬において、82%が胃内視鏡検査で胃潰瘍病変が確認…

症状がある馬とない馬の胃内視鏡所見の比較(Murrayら1989)

さまざまな年齢の馬を調査したところ、胃粘膜潰瘍の所見率と病変のグレードは、症状がある馬の方が高いことがあきらかとなりました。 レースに向けたトレーニングをしている馬とトレーニングしていない馬を比較すると、トレーニングしている馬の方が所見率と…

調教中の馬におけるオメプラゾールによる胃潰瘍症候群の予防的治療(Masonら2019)

PRISMAのガイドラインに基づいて、過去の文献検索を行い、メタ解析を行った調査があります。377報から7報を選択し、研究に組み入れました。 ここでは、馬の胃潰瘍治療に最も多く用いられているプロトンポンプ阻害薬であるオメプラゾールについて、これを予防…

競走馬の胃の病変に関わる要素(Murrayら1996)

現役サラブレッド競走馬に関する胃潰瘍の調査をまとめた報告があります。 この調査では、調教中のサラブレッド競走馬では、93%に胃潰瘍病変が認められました。性別、年齢、抗炎症薬などの投薬歴では差が見られず、直近2ヵ月の出走の有無が病変グレードと関…

競走馬の胃潰瘍の所見率と発生分布(Beggら2003年)

馬の胃潰瘍は、競走馬のほとんどにみられる疾患であることが、数々の調査で判明しています。 今回紹介する文献では、345頭(うちサラブレッド331頭)のうち、86%で胃潰瘍がみつかったとされています。胃粘膜が損傷した状態を評価する重症度分類は、潰瘍の深…

腱損傷により引退するリスク因子を同定するための調教データの評価(Lamら2007)

競走馬が受けている調教が、どんな損傷のリスクになるかというのは非常に難しい問いです。 それぞれの馬の状態に合わせて調教を行うことが普通ですので、一貫した条件がなく、明確なリスク因子を特定することは、回顧的調査では難しいです。 香港における競…

英国競走馬の骨盤と脛骨疲労骨折にかかわる因子の症例対照研究(Verheyenら 2006年)

骨盤と脛骨の疲労骨折が診断される前の1ヵ月の調教距離は、50kmをピークに、距離が延びるほど疲労骨折のリスクが増加しました。 砂を主体としたオールウェザーコースによる調教では疲労骨折のリスクが増加しましたが、症例数が少なく解析ができませんでした…

シンチグラフィ検査を受けた馬における調教馬場と疲労骨折による跛行の解析(MacKinnonら2015)

カナダ(トロント)とアメリカ(バージニア)の馬病院で、シンチグラフィ検査を受けた馬についての調査が行われました。 疲労骨折の所見率はダート調教で23.0%、合成材コースで31.7%という結果でした。しかし、調教コースだけでなく、調教方針も骨折発生に…

レポジトリ検査で認められる副手根骨骨片の競走への影響(Davernら2019)

1歳セリで認められる腕節の副手根骨近くにみられる骨軟骨片が、将来の競走パフォーマンスに与える影響について調査した文献があります。 このX線所見は、非常にまれなもので、この文献では8年間のセリで47頭でした。ちなみに、日本の1歳セリのレポジトリ検査…

1歳馬の購買前X線検査所見が2歳時の競走パフォーマンスに与える影響(Prestonら2012)

1歳時に認められる前肢種子骨の骨増生・骨増殖体が2歳時に出走できるかどうかに影響することが明らかにされています。前肢種子骨の骨増殖体は繫靱帯脚部の付着部に形成されるもので、育成の過程で繫靱帯脚部炎を併発してしまうと、早期にデビューすることが…