育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

国内の育成馬の繋靭帯脚炎の予後について(日高ら JRA調査研究2012年)

国内の育成馬における繋靭帯脚炎の予後について調査した報告の紹介です。

JRA競走馬に関する調査研究発表会2012において発表された内容です。

https://company.jra.jp/equinst/publications/pdf/y54.pdf

演題番号23:繋靭帯脚炎を発症したサラブレッド育成馬の予後

繋靭帯脚炎を発症したサラブレッド育成馬 98 頭を対象とし、発症馬の出走率、初出走時期、出走回数、総獲得賞 金および 1 出走あたりの平均獲得賞金について調査。
前肢発症群の出走率は 81.0%、初出走時期は 3 歳 4 月(中央 値 )、 出 走 回 数 は 11.6±11.3 回(中央値 :8.0 回 )、 総 獲 得 賞 金 は 240.6±433.4 万円(中央値: 67.7 万円)、 1 出走あたりの平均獲得賞金は 30.4±58.5 万円(中央値: 3.3 万円)。
これらのうち、初出走時期、出走回数、総獲得賞金および 1 出走あたりの平均獲得賞金は母 系兄弟姉妹と差が認められた( P<0.05)。
後肢発症群の出走率は 94.7%、初出走時期は 3 歳 3 月( 中 央 値 )、出 走 回 数 は 15.1±11.0 回(中央値 :11.5 回 )、総獲得賞金は 1357.9±2241.2 万 円(中央値 :83.1 万円)、 1 出走あたりの平均獲得賞金は 58.1±82.6 万円(中央値: 7.0 万円)
初出走時期のみ母系兄弟姉妹と差が認められた( P<0.01)。
前後肢ともに内外側間での差は認められなかった。

   

単純な比較はできませんが、出走率は紹介した文献(66%)よりも高いです。
しかし、やはり初出走は中央値で3歳3月または4月と遅くなっており、早期発見と調教復帰に向けた積極的な休養およびリハビリテーションが肝要と考えます。