育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

喉頭形成術と声嚢切除の術後成績(Russelら 1994年)

喉頭片麻痺に対する治療は、披裂軟骨を強制的に外転させて固定する喉頭形成術が選択されます。披裂軟骨の外転が緩むことで声嚢も弛緩した状態になるため、声嚢切除を組み合わせることで成績が向上すると考えられています。
今回はその術式を検証した少し前の文献を紹介します。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”要約
 左喉頭片麻痺と診断し、喉頭形成術と声帯声嚢切除によって治療した70頭の医療記録を調査した。退院前に披裂軟骨外転の程度を評価した。55頭について馬主または調教師への聞き取り追跡調査を行った。合併症があればそのタイプや頻度を記録し、馬主や調教師の手術結果に対する満足度も記録した。42頭は競走成績を調査可能で、術後のパフォーマンス評価に加えた。術後聞き取り調査によると、成功率はサラブレッド競走馬では48%(19/40)で、サラブレッド以外の血統(93%;14/15)と比べて低かった。競走馬では年齢が若いと70%(14/20)で、3歳以上の馬(25%;5/20)よりも良好な成功率であった。披裂軟骨外転の程度は成績に与える影響は少なかったが、例外的に最大外転していた馬(G5)では合併症の発生率が高く、矯正がうまくいかなかった。最も多くみられた合併症は2つあり、運動不耐性(42%;23/55)と運動時の異常呼吸音(47%;26/55)であった。”