育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

オーバーグラウンド内視鏡検査中の運動条件と結果の相関(Allenら 2010年)

運動時内視鏡検査は、これまでに多くの結果が報告されており、さまざまな運動中の上気道疾患が発見されてきました。しかしながら条件の違いにより、異なる結果が得られることが分かってきており、検査精度を向上させるために標準化させる必要があります。

今回紹介する文献は、競走馬におけるオーバーグラウンド内視鏡検査時の運動条件を記録し、検査結果との相関を分析した研究です。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”研究を実施した理由
 英国ではオーバーグラウンド内視鏡検査の件数が増えてきている。これまでの研究で、運動試験のタイプによって上気道閉塞の診断に影響がでることが明らかになった。オーバーグラウンド内視鏡検査をうまく行うためには、適切な運動試験のプロトコルを理解する必要がある。

目的
 英国の競走馬におけるオーバーグラウンド内視鏡検査中に行った運動試験のパラメーターを記録し、上気道閉塞の診断への影響を調査すること。

方法
 運動中の異常呼吸音およびプアパフォーマンスを示した140頭のサラブレッド競走馬に対して行った運動試験のパラメーターと運動時内視鏡検査を記録した。

結果
 馬によって運動試験のパラメーターは大きくばらつきがあった。症状の再現は調教中の異常音が最も容易であったが、異常呼吸音がないプアパフォーマンスでは再現が最も困難であった。上気道閉塞の有無と運動試験パラメーターの間に相関は認められなかった。競走中の異常呼吸音を示した馬について、軟口蓋背側変位は走行距離が長いほど多く観察された。

結論
 野外での運動試験を標準化することは難しい。複雑な条件があり、競走馬によってギャロップは大きく異なる。すべてのサラブレッド競走馬に対して使える運動試験のプロトコルを確立することは不可能である。したがって、現時点で最善の方法は、競走中に異常呼吸音やプアパフォーマンスを示すなら、できる限り競走条件に近づけて再現することである。長距離のレースを使っている馬であれば、調教師の許しが出るなら周回コースでのギャロップを行う必要がある。”