育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

内視鏡視下でのレーザーによる声帯声嚢切除(Hendersonら 2007年)

声帯声嚢切除の術式は、喉頭切開を行って腹側から目視して行う方法と、内視鏡視下で行う方法が考案されています。喉頭切開は、浸出液をため込まないように切開創を縫合せずに自然治癒するのを待ちます。そのため術創の管理に注意を払う必要がありますし、見た目もあまりきれいに見えない、という点があります。一方、内視鏡視下での操作では喉頭切開をする必要がありません。そのため術創の管理という点では大きなメリットがあります。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

”目的
 自然に発症した左喉頭片麻痺の症例に対し、内視鏡視下でのレーザーによる声帯声嚢切除を行い、異常音やパフォーマンスへの長期的な影響を明らかにすること。

デザイン
 回顧的症例研究

動物
 左喉頭片麻痺をレーザーによる声帯声嚢切除で治療した馬22頭

方法
 医療記録から、最初の症状、馬の使用目的、異常呼吸音を示した期間、術前のパフォーマンスレベル、内視鏡所見、手術方法、術後治療、合併症を調査した。追跡調査では馬主および調教師への聞き取り調査を行い、復帰までの期間、術後のパフォーマンスレベル、異常音の減少度を調査した。

結果
 すべての馬は過剰な異常呼吸音を呈していた。10頭(45%)は運動不耐性も示した。左の声帯声嚢切除は全頭で行われ、1年後に右の声帯声嚢切除を行った馬が1頭(5%)いた。合併症は3頭(14%)で認めた。20頭(91%)が用途に復帰した。術後、18頭(82%)で過剰な異常呼吸音は消失し、運動不耐性は10頭中8頭で改善した。3頭のサラブレッド競走馬が競馬に復帰し、さらに1頭は1年後に喉頭形成術を受けた。

結論
 内視鏡下でのレーザーによる声帯声嚢切除は、左喉頭片麻痺の馬において異常呼吸音をなくし、パフォーマンスを向上させるために有効な方法であった。”