第三中手骨の遠位骨幹部におきる疲労骨折は、これまでに報告が少なく、珍しい疾患のようです。私自身はこれまでに育成馬で数頭の発症を診断したことがありますが、跛行は重度で、球節の腫脹も明瞭となることから、はじめはP1やMC3の縦骨折を疑うほどだったと記憶しています。発症初期に注意深く触診すれば骨増生を触知できるのかもしれませんが、たいていは皮下の腫脹が顕著で触診痛・屈曲痛が強く、判別できた経験はありません。
”要約
競走馬では球節に関連した骨折に遭遇することは多い。レース中や調教中におきる球節の骨折は大部分は第三中手骨もしくは第三中足骨遠位の顆骨折か、第一指(̪趾)骨の縦骨折である。これらの臨床的特徴や治療、成績についてはこれまでに十分記録されてきた。しかし遠位骨幹部の横方向の骨折についてはほとんど観察されておらず、文献的にも関心は低い。この論文では、3年間に診断した6頭における臨床所見およびX線検査所見を記述する。第三中手骨の横骨折は症状は様々であるが、球節部に臨床症状がみられるのが典型的で、場合によっては命にかかわる。したがって球節の骨折を疑うときには重要な鑑別診断となる。”