育成馬臨床医のメモ帳

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遠位足根関節の疼痛がある馬のシンチグラフィによる評価(Murrayら 2005年)

炎症を早期に発見できる可能性のあるシンチグラフィで遠位足根関節を評価するのは有効か?

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

   

“要約

 遠位足根関節の疼痛は、後肢跛行の一般的な原因であるが、X線検査のみで必ず診断がつくわけではない。シンチグラフィ検査は、他の診断装置で検出できないわずかな変化も検出できる可能性がある。

 

 筆者らの立てた仮説は、以下の3つであった。

①遠位足根関節の疼痛は、想定される放射性医薬品取り込み(RU)パターンの消失と関連する。

②遠位足根関節のRUは、疼痛のある馬がない馬より多い。

③疼痛がありX線検査で骨関節炎所見がある馬の飛節RUは、疼痛があるがX線検査で骨関節炎所見がない馬よりも多い。

 

 この研究の目的は、遠位足根関節の疼痛がある馬における遠位足根関節領域の放射性医薬品の分布を明らかにし、対側肢および足根関節の疼痛がない馬と比較することであった。

 

 遠位足根関節の疼痛がある馬52頭について、遠位足根関節領域のシンチグラフィ画像を回顧的に調査した。対象馬は、X線検査で骨関節炎所見がない馬15頭をグループ1、骨関節炎所見が明らかな馬37頭をグループ2とした。画像は遠位足根関節に対して垂直および水平方向に解析し、関心領域を遠位足根関節と脛骨領域に設定してRU比を求めた。

 

 グループ1および2の症例で、跛行のある肢において、RU比はそれぞれの対側肢および正常な馬と比較して大きかった。底側像において、グループ2では跛行のある肢で関心領域数が対側肢より多かったが、グループ1では差はなかった。グループ1では跛行のある肢と対側肢でRU比に正の相関が認められたが、グループ2では認められなかった。跛行のある肢では垂直方向の正常な活性プロファイルが消失していて、グループ1では85%、グループ2ではすべてでみられた。また水平方向の正常な活性プロファイルはグループ1ではすべて、グループ2では96%で消失していた。跛行による明らかな影響がみられたが、全てのプロファイルでピークにグループの影響はなかった。

 

 本研究の結果から、遠位足根関節の疼痛は、正常馬でみられるRUパターンが消失することと関連していることが示唆された。また、疼痛のある肢では遠位足根関節のRUは疼痛のない馬より多いこと、疼痛があり骨関節炎所見のある肢のRUは骨関節炎所見のない肢より多いことが示唆された。”