上腕骨は肩関節と肘関節の間で捻った形状を持つ骨で、特殊な負荷のかかり方をするため、骨幹部の螺旋状の斜骨折が多いと考えられています。
しかし、まれに肩関節から上腕二頭筋滑液嚢を構成する上腕骨大結節が骨折することがあります。
この文献における上腕骨近位の頭側近位-頭側遠位斜位像について
X線照射する人、カセッテを持つ人、患肢を保持する人の3人必要です。
保持する人は患肢の管を持って患肢を挙上します。すると肩関節が頭側方向に突出します。カセッテは肩関節の真下に置き、肩関節の真上からX線を照射することで、上腕骨の大結節の2つのこぶがきれいに見えます。
骨折の予後について
この文献では11/15と良好な運動復帰の予後が示されていますが、手術を行った症例の7/10は骨片摘出であったことから、損傷がある程度限定的な症例を多く含んでいた可能性があります。
“要約
目的
上腕骨大結節の骨折症例の臨床症状、X線画像の異常および治療成績を明らかにし、立位の馬での上腕骨近位部の頭側近位-頭側遠位斜位像のX線撮影法を確立すること。
デザイン
回顧的症例研究
動物
15頭の馬
方法
医療記録から、シグナルメント、病歴、用途、跛行の重症度と期間、X線および超音波検査所見、治療および成績を調査した。
結果
全ての馬は急性の片側性跛行を示した。15頭中12頭は肩関節領域に視診および触診で明らかな異常を認めた。8頭中6頭は、上腕骨近位の頭側近位-頭側遠位斜位像で骨折が確認できた。うち2頭はこの方向の撮影でしか骨折が判別できなかったし、他の2頭ではこの方向の撮影が最も診断が確実であった。10頭は手術を行い、7頭で骨片摘出、2頭でオープンな整復内固定、1頭で探査のみ行った。ほかの5頭はさまざまな期間の馬房内休養と放牧により治療した。手術した馬は9/10が、手術しなかった馬は2/5が運動復帰し、合計で11頭が運動に復帰した。
結論と臨床的関連性
本研究の結果から、上腕骨大結節の骨折症例は、治療後に問題なく運動復帰できる可能性があることが示唆された。また、この領域で損傷が疑われる場合、上腕骨近位の頭側近位-頭側遠位斜位像を撮影する必要があることが強調された。”