カリフォルニア大学デイビス校の獣医教育病院で行った300頭以上の去勢手術とその合併症をまとめた文献が報告されています。
ここでは、合併症の発生率は10.2%、致命的な腸管脱出の1頭を除き、全て回復したと報告されています。
目的
合併症の発生頻度を明らかにすること、通常の去勢手術後に起こる合併症に関するリスク因子を同定すること。
デザイン
回顧的症例集、311頭の馬、10頭のラバ、3頭のロバを対象とした。
方法
通常の去勢手術を行った馬の医療記録を回顧的に調査した。年齢、品種、手術手技(閉鎖もしくは半閉鎖、使用した結紮の方法)、麻酔手技(全静脈麻酔もしくは立位鎮静と局所麻酔の併用)、麻酔薬の繰り返し静脈投与、抗菌薬および抗炎症薬、合併症の発生、管理、その結果について記録した。オッズ比および95%信頼区間を求めた。手術中の麻酔薬の追注と合併症の発生との関連をJonckheere-Terpstra testを用いて解析した。*1
結果
術後の合併症は、324頭中33頭(10.2%)の馬で認められた。うち32頭は回復し、1頭は腸管脱出のため安楽死となった。半閉鎖法の去勢術を受けた馬は、閉鎖法で手術を受けた馬よりも合併症の発生オッズが有意に高かった(オッズ比4.69、95%信頼区間2.09-10.6)。全身麻酔維持のために追加の麻酔薬投与が必要となった馬では、追注しなかった馬よりも合併症の発生頻度は高かった。
結論と臨床的関連性
合併症の発生率は低く、本研究で検討した要素のほとんどは去勢術後の合併症と関連がなかった。しかし、手術手技(閉鎖法と半閉鎖法)は、合併症の発生に関して重要な要素であると示唆された。今後、手術時間が合併症と関連するかの調査をすべきである。