去勢術では、精索を挫滅したり、結紮したり、捻じ切ったりして切除する術式がとられます。まれではありますが、精索の断端は陰嚢から侵入した細菌により感染が起こることがあります。切開部から排膿と洗浄を行い、細菌培養および薬剤感受性検査をもとにした適切な抗菌薬による治療を行いますが、現場での治療で解決できない場合には早期に二次診療施設に紹介し、外科的な処置を行う必要があります。
文献でわかったこと
去勢術後の精索断端の感染を、外科的に処置した症例についてCornell大学の先生がまとめた報告があります。排膿が持続するような症例では外科的に処置する必要がある症例があり、その場合にも短期および長期的な生存の予後は良好で、長期調査の結果、87.5%が元の運動に復帰できたと報告されています。
参考文献
目的
馬における去勢術後の精索感染の外科的な処置と短期および長期追跡調査について報告すること。
研究デザイン
回顧的症例シリーズ
動物
馬主が所有する23頭の馬
方法
2001-2017年の期間で術後の精索断端の感染を外科的に処置した馬の医療記録を回顧的に調査した。去勢術から来院までの時間、診断手技、外科的な合併症、細菌培養および薬剤感受性試験、退院までの生存を調べた。可能であれば馬主に聞き取り調査し、長期追跡調査とした。結果には記述統計を用いた。
結果
馬の年齢は2-14歳(平均4.1歳)、術後12-3561日(中央値33日)で来院していた。23頭のうち5頭は再手術が必要になり、出血が2頭、感染の持続が3頭であった。全ての馬が退院まで生存した。16頭で長期の追跡調査が可能で、期間は術後6-135ヵ月(平均27.4ヵ月)であった。16頭中14頭は完全に症状が解消し、もとの運動に復帰した。復帰できなかった2頭は、1頭は排膿が続き、もう1頭は十分なパフォーマンスができずに引退した。
結論
術後の合併症で出血や感染の持続は見られたものの、今回の症例群において、去勢術後の精索の感染は短期および長期生存の予後は良好であった。
臨床的意義
本研究は、去勢術後の精索感染の治療を記述したもので、その生存率は良好であった。