育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

手根管症候群の手術を受けたトロッター競走馬の成績(Carmaltら2017)

ハイライト

スタンダードブレッド競走馬では、手根管症候群の症例馬は走行スピードが速いが、手術日に近づくにつれてスピードが落ちた。

競走復帰率は90.5%で、競走成績や競走寿命は、手根管症候群の症例馬と対照馬で差がなかった。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

目的

 手根管腱鞘の手術を受けたスウェーデンのスタンダードブレッド競走馬において、競走スピードに影響する要素を明らかにすること。術前の競走スピードが特定の術中所見と関連するか、競走復帰できたか調査すること。手術症例馬と年齢と性別がマッチする対照とパフォーマンスを比較すること。

 

動物

 手根管腱鞘の手術を受けたスウェーディッシュスタンダードブレッド競走馬149頭と年齢・性別がマッチする対照馬274頭

 

方法

 手根管症候群の症例馬の医療記録を調査した。症例馬と対照馬の競走成績はオンラインデータベースから取得した。一般化推定方程式を用いて、全体と術前の競走スピードを調査し、術前の臨床所見および術中所見と術前後のスピードとの関連を調査した。多変量回帰解析を用いて、生涯獲得賞金および出走数を調査した。カプランマイヤー生存曲線解析を用いて、競走寿命を症例馬と対照馬で比較した。

 

結果

 手根管症候群の症例馬は、対照馬より有意に走行スピードが速かった。症例馬の走行スピードは手術日までに下がっていったが、術後は走行スピードが上がった。症例馬の137頭中124頭(90.5%)が術後に出走した。腱鞘内の病的な所見は術前の走行スピードと有意な関連はなかった。競走寿命は症例と対照に違いはなかった。

 

結論と臨床的関連性

 手根管症候群の馬は術後競走復帰の予後は良好であった。手術馬と対照馬で競走成績に有意差はなかった。