運動時内視鏡検査により、上部気道疾患の診断は飛躍的に向上しました。
運動時にしか診断が困難な上気道疾患のひとつが披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位です。披裂喉頭蓋ヒダは、その名の通り、披裂軟骨と喉頭蓋軟骨にまたがる粘膜ヒダのことです。この緊張がゆるむと、吸気時の陰圧で気道内にせり出し、気道を塞いでしまいます。
今回は披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位の治療成績についてまとめた初期の文献を紹介します。
”目的
52頭の競走馬における披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位の臨床所見を記述し、うち33頭については休養または披裂喉頭蓋ヒダのレーザー切除後の成績を報告すること。研究デザイン
回顧的研究動物と検体
プアパフォーマンス評価のため、高速トレッドミル試験を受けた競走馬方法
医療記録および安静時・運動時の内視鏡検査動画を調査した。高速トレッドミル試験から少なくとも1年以上の期間で競走成績と馬主または調教師への聞き取りを行い、33頭の披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位に対して休養または手術を行った馬と、上気道疾患のない馬を比較した。結果
プアパフォーマンス評価を行った馬のうち、6%で披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位を認めた。血統及び性別に偏りはなかったが、披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位を認めた馬は、高速トレッドミル試験を行った馬の全体より若い年齢であった。披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位を認めた52頭のうち、19頭はそれ以外の上気道疾患を少なくとも一つ併発していた。披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位と他の上気道疾患に明らかな相関は認めなかった。ヒダの外科的切除は立位または全身麻酔下で行い、合併症はなかった。披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位を単独で認めた場合、外科手術を行った75%、休養した50%の馬でパフォーマンスの改善を認めた。馬主と調教師の聞き取りでは、手術を行った馬でより大きな改善を感じた。結論
披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位に対しては外科手術が推奨されるが、手術しなくても解消した馬がいた。しかし、保存療法よりも外科手術のほうが馬主や調教師の満足度は高かった。臨床的関連性
披裂喉頭蓋ヒダ軸側変位の診断は高速トレッドミル内視鏡検査でのみ可能である。披裂喉頭蓋ヒダの弛緩部切除は鎮静、内視鏡下でのレーザー焼烙により安全に行うことができ、気道閉塞を解消し、早期の調教復帰が可能である。”