育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

競走馬の肩甲骨骨折と疲労骨折

診断麻酔で腕節または前腕以下のブロックに反応しなかった場合、より近位の肘や肩関節などを疑って検査を進めます。 肩甲骨や上腕骨の骨折は、先行する疲労骨折に関連して発生すると考えられています。 肩甲骨骨折の起きやすい部位は、遠位で肩甲棘と頚部の…

肩関節のわずかな骨軟骨病変の診断所見と関節鏡処置後の予後(Doyleら2000)

肩関節を原因とする跛行は、診断が難しいです。 はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 肩関節の骨病変や軟骨下骨の異常およびOCDは、若馬で跛行の原因となることが報告されています。しかし、臨床現場では、ごくわずかな所見しか得られず、X線検査…

第一趾骨近位底側骨片の関節鏡視下除去23頭(Simonら2004年)

第一趾骨底側の骨片は、若齢馬で症状を伴わないOCのような症状としてみられる骨軟骨片もあれば、運動負荷が増大して付着する靱帯から受ける力によって裂離骨折を起こすこともあります。 後肢での発生が多いこの骨折に対し、スタンダードブレッド競走馬におけ…

近位種子骨軸側骨炎8症例(Dabareinerら2001)

文献でわかったこと 種子骨軸側の骨炎は、X線DP像での種子骨の透過領域に基づいて診断されます。また、超音波検査では種子骨間靭帯および種子骨軸側辺縁の骨の輪郭を評価することが可能です。 診断麻酔で球節内または指屈腱鞘内への麻酔を行って確定しました…

脛骨内側顆間隆起の骨折21症例(Rubio-Martinezら2020)

はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 脛骨顆間隆起の骨折は、X線検査において膝関節内の骨片として認識されます。この骨片の鑑別診断として、前十字靱帯の付着部裂離骨折がありますが、実は発症メカニズムが少し異なるかもしれません。 (adsbygoo…

近位種子骨軸側無菌性骨炎の臨床的・画像診断的特徴(Vanderperrenら2014)

はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 近位種子骨軸側の骨炎は感染性と無菌性に発生します。感染性の場合は穿孔性の外傷やフレグモーネなどにより汚染されたことが原因となります。一方で無菌性の場合は、内外の種子骨軸側を繋ぐ靭帯(掌側または…

副手根骨前面骨折と手根管腱鞘への影響(Minshallら2014)

文献でわかったこと 参考文献 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 文献でわかったこと 副手根骨の骨折はまれですが、なかでも前面の完全骨折が最も多いとされています。副手根骨が前面で骨折した場合の多くは粉砕した骨片が発生し、手根管…

若齢馬における近位指節間関節背内側の骨軟骨片(Fjordbakkら2007)

はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 近位指節間関節の骨片は、レポジトリ検査などでまれに見つかることがあります。 しかしながら、この骨片の臨床症状や競走成績に与える影響に関する調査は多くなく、判断が難しいことがあります。 (adsbygoogl…

化膿性滑膜炎に対する連続的滑液嚢内抗菌薬投与31症例(Lescunら2006)

はじめに 文献で分かったこと はじめに 化膿性滑膜炎は緊急疾患で、感染が見つかり次第、洗浄や抗菌薬投与を行うことが良好な予後に繋がると考えられています。 しかし、何らかの原因で発見が遅れたり、慢性化してしまった場合には、長期的な全身抗菌薬が行…

領域や疾患に関連した馬の顎関節円板の性質の違い(Cotaら2019)

顎関節は下顎骨関節面と頭骨下顎窩の関節で、その間には関節円板があり、関節機能に重要な役割を果たしています。 ヒトでは顎関節の異常にこの関節円板が関わっていることがわかってきていて、動物でも関連が疑われています。 大きな関節であるため関節円板…