育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

種子骨骨折について その3(Schnabelら 2018年)

種子骨骨折について、今回から型別の各論です。第一弾は尖部骨折について。

 

Diagnosis and management of proximal sesamoid bone fractures in the horse
L. V. Schnabel W. R. Redding Equine vet. Educ. (2018) 30 (8) 450-455

 

尖部骨折

サラブレッドでもスタンダードでも、種子骨尖部骨折の除去手術を推奨する根拠はたくさんある。関節鏡は関節切開よりも強く好まれ、軟部組織損傷や関節周囲線維化を最小限にできる。外科手術の最も重要な点は、繋靭帯、種子骨間靭帯、掌側および底側の軟部組織を傷つけずに骨片を摘出することである。関節切開は骨片がある側からしかできないが、関節鏡は術者の好みで同側からでも反対からでも操作できる。器具もたくさん報告されていて、術者の好みで選べる。

術後のパフォーマンスは良好で、スタンダードで67%、サラブレッドで77%の競走復帰が報告されている。スタンダード競走馬で術後のパフォーマンスに影響を与える因子は、前肢の骨折であることと、出走歴があることである。スタンダード競走馬で前肢の骨折は後肢の骨折に比べて術後の獲得賞金が有意に減少するし、出走歴がある馬(88%)は出走歴がない馬(56%)より有意に復帰率が高かった。成熟したサラブレッド競走馬において術後の成績に影響を与える因子は前肢内側の骨折繋靭帯炎の有無であった。前肢内側の術後復帰率は47%で、その他の部位の復帰率86%より低かった。また繋靭帯炎がある馬の復帰率は63%で、ない馬の復帰率は82%であった。同様に、未熟なサラブレッド競走馬においても前肢では55%後肢では88%と有意に低い復帰率で、前肢内側の予後が最も悪かった興味深いことに、どの種でも骨片の大きさは予後に影響しなかった。