ブピバカインのリポソーマル製剤とブピバカインの局所投与による効果を比較した文献があります。
この文献では、蹄に巻き付けるクランプを設置し、それをきつく締めることによって実験的に疼痛と跛行を再現しています。そして体に装着する跛行ロケーターによって定量的に観察し、この跛行をどの程度、どれだけの期間和らげたかを評価しました。
これによると
・リポソーマル製剤では前肢跛行モデルのほとんどの跛行が改善した。
・同用量のブピバカインと比較して同等の鎮痛効果が得られた。
・組織学的には投与部位に3/10か所で軽度の炎症像が見られた。
引用文献
Kayla M Le, Stephanie S Caston, Jesse M Hossetter, Bonnie L Hay Kraus
Am J Vet Res. 2020 Jul;81(7):551-556. doi: 10.2460/ajvr.81.7.551.
“要約
目的
実験的に誘導した跛行の馬に対して、種子骨反軸側の神経ブロックを行ったときのブピバカインリポソーマル製剤の鎮痛効果と組織への影響を評価すること。
動物
6頭の軽種成馬
方法
ランダム化クロスオーバー試験において、前肢に蹄に巻き付けるクランプを装着し、可逆的な跛行を誘導した。跛行を再現した肢に対し、種子骨反軸側神経ブロックを、ブピバカインとして10mgとなるように、リポソーマル製剤および塩酸塩を皮下投与した。定量的な歩様のデータは、体に装着するセンサーシステムを用いて客観的に評価し、投与前(ベースライン)と投与後30分間隔で計測した。ベースラインの85%の跛行となるまでの時間をもとめた。最短でも4日のウォッシュアウト期間を設け、異なる肢に異なる方法で行った。最後には掌側指神経と神経周囲の組織を回収し、組織学的に検索した。
結果
ブピバカインリポソーマル製剤の神経周囲投与により、5/6頭の前肢跛行が改善した。鎮痛の持続時間中央値は、リポソーマル製剤(4.5時間)とブピバカイン塩酸塩(3.0時間)の間に有意な差は認められなかった。組織学的には、リポソーマル製剤を投与した部位に軽度の炎症が3/10か所で認められたが、ブピバカイン塩酸塩の投与部位ではそれが見られなかった。
結論と臨床的関連性
ブピバカインリポソーマル製剤を神経周囲の皮下に10mg投与することで、実験的に誘導した前肢跛行を軽減された。ミリグラム単位で同用量のリポソーマル製剤と塩酸塩では同様の鎮痛工があった。馬において神経ブロックのためにブピバカインリポソーマル製剤を臨床的に使用することを推奨する前に、さらなる調査が必要である。”