育成馬臨床医のメモ帳

このサイトは、育成馬の臨床獣医師が日常の診療で遭遇する症例に関して調べて得た情報をメモとして残すものです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

飛節のオカルト軟骨下骨シスト状病変(Garcia-Lopezら2004)

文献でわかったこと 飛節を構成する骨には、感染に関連してシスト状病変が形成されることがごくまれにあります。この病変はルーティンなX線検査では検出することができず、そのため表題の通り「オカルト」と表現されているようですが、シンチグラフィ検査で…

大腿骨外側滑車骨軟骨症の関節鏡手術成績37例(UpRichardら2013)

OCD

購買前のレポジトリ検査などで膝関節に認められる病変のひとつに、大腿骨外側滑車の骨軟骨症があります。これは症状を示さない場合もありますが、跛行やプアパフォーマンスの原因になりうる疾患です。 外科的に掻爬することで、術後にパフォーマンスを発揮で…

下腿足根関節の軟部組織損傷:関節鏡所見の回顧的調査30頭(Barkerら2013)

飛節を原因とする跛行に関連する骨疾患は、診断の難しい足根骨の骨折や、脛骨外果または内果の骨折といった病変が挙げられます。しかし、骨の損傷だけではなく、関節内の軟部組織損傷でも跛行することが報告されています。 equine-reports.work equine-repor…

脛骨外果骨折の関節鏡による治療26頭(Smithら2011)

脛骨外果骨折について連続して取り上げます。 脛骨外顆骨折 この骨折は、飛節の外側を構成する脛骨の外果に発生します。外傷に関連して発生することが多く、転倒や転落などのアクシデントはこの疾患を疑う上でのキーとなる稟告です。育成期には、凍った地面…

スタンダードブレッド競走馬の脛骨疲労骨折13頭(Rugglesら1996)

脛骨疲労骨折とは equine-reports.work 疲労骨折と運動歴および発症率 equine-reports.work equine-reports.work equine-reports.work 疲労骨折と完全骨折 equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 脛骨疲労骨折はサラブレ…

脛骨外果骨折の関節鏡による骨片除去:13頭の回顧的調査(O'Neillら2010)

脛骨外果骨折について連続して取り上げます。 この骨折は、飛節の外側を構成する脛骨の外果に発生します。外傷に関連して発生することが多く、転倒や転落などのアクシデントはこの疾患を疑う上でのキーとなる稟告です。育成期には、凍った地面での転倒や、ウ…

脛骨と上腕骨疲労骨折のサラブレッド競走馬99例(O'Sullivanら2003)

脛骨疲労骨折とは equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 疲労骨折と運動歴および発症率 equine-reports.work equine-reports.work equine-reports.work 疲労骨折と完全骨折 equine-reports.work スタンダードブレッド競…

馬の脛骨外果骨折16頭(Wright1992)

脛骨外果骨折について連続して取り上げます。 脛骨外顆骨折 この骨折は、飛節の外側を構成する脛骨の外果に発生します。外傷に関連して発生することが多く、転倒や転落などのアクシデントはこの疾患を疑う上でのキーとなる稟告です。育成期には、凍った地面…

肩甲上腕関節の骨軟骨症32例(Jennerら2008)

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 目的 馬の肩関節における骨軟骨症に対する外科または保存療法の成績を回顧すること。 方法 2歳未満で肩甲上腕関節に骨軟骨症があると診断した32頭についての回顧的調査。病変の重症度は内外方向のX線画像における計測に基づいた。追…

非競走馬におけるP1短矢状骨折に対する螺子固定による骨接合術の長期成績(Brynerら2020)

先日紹介した乗用馬におけるP1の短矢状骨折の治療成績においては、外科的な治療を選択することで運動復帰できる可能性があることが示唆されました。 equine-reports.work 2020年に発表された温血種を主とする乗用馬の治療成績の報告では、31頭中27頭がもとの…

競走用でない馬のP1短矢状骨折(Kuemmerleら2008年)

球節を構成する第一指(趾)骨(P1)における矢状骨折は競走馬に多く発生しますが、乗用馬にも発生することがあります。 なかでも短い矢状骨折については、軟骨下骨の骨硬化やシスト状病変を伴うことがあることがあることが報告されています。保存療法では跛…

球節背側骨片骨折に対する非外科と外科処置の競走成績(Ramzanら2020)

背景とはじめに 調査でわかったこと 参考文献 背景とはじめに 球節背側の骨片は、1回の大きな負荷もしくは慢性的な繰り返し負荷によるリモデリングから二次的に発生する可能性があります。 この骨片に対する治療は、外科的に摘出する方法とその成績が報告さ…

球節の骨片骨折に対する非外科と外科的処置(Ramzanら2020)

背景とはじめに 球節背側の骨片は、前肢でP1背内側に最も発生しやすく、偶発所見の場合もあれば、関節腫脹や跛行を伴うこともあります。1回の大きな負荷もしくは慢性的な繰り返し負荷によるリモデリングから二次的に発生する可能性があります。 この骨片に対…

調教中の若いサラブレッドの関節損傷リスクは運動に影響される(Reedら2013)

英国の競走馬における調査では、ある程度の頻度でキャンター調教を行えている馬は腕節や球節の損傷リスクが低くなる一方で、高速調教の距離が増えると画像診断で明らかな骨折や関節損傷を示す像が得られるリスクが増加するようです。 とはいえ、トレーナーご…

膝関節の跛行と探査的関節鏡と掻爬後の長期成績44頭(Cohenら2009)

膝関節を原因とする跛行は、育成期には骨シスト状病変によるものが多いですが、高齢馬では関節内の軟部組織(靭帯、半月板、関節包、軟骨など)を損傷していることが多いです。 文献でわかったこと 膝関節を原因とする跛行の症例において、半月板の損傷は多…

競走馬において運動の距離とスピードは骨折リスクに影響する(Verheyenら2006年)

競走馬の骨折と調教内容について分析することは、疾病発生リスクを評価するうえで重要ですが、様々な要素が関わっていることやデータが取りにくいことが障壁となります。同一または同じような調教場を使って調教しているサラブレッドを対象にすることで、均…

英国競走馬における第一指骨近位背側骨軟骨片の発生分布(Walshら2018)

はじめに 様々な血統や用途の馬において、球節内の骨片骨折は背内側に多く発生することが報告されています。球節に骨折した場合には骨片は角がありますが、慢性または陳旧性の骨片は角がとれた丸い形をしています。 研究でわかったこと 英国におけるサラブレ…

球節に起因する跛行の馬にみられる低磁場MRI所見131頭(Powell2012)

球節領域の損傷はさまざまな病態があり、微小な変化は単純X線検査だけでは検出できない可能性があります。MRIでは、骨折や骨軟骨損傷に関連した信号パターンが続々と明らかにされてきています。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); はじめ…

競走馬の肩甲骨骨折と疲労骨折

診断麻酔で腕節または前腕以下のブロックに反応しなかった場合、より近位の肘や肩関節などを疑って検査を進めます。 肩甲骨や上腕骨の骨折は、先行する疲労骨折に関連して発生すると考えられています。 肩甲骨骨折の起きやすい部位は、遠位で肩甲棘と頚部の…

肩関節のわずかな骨軟骨病変の診断所見と関節鏡処置後の予後(Doyleら2000)

肩関節を原因とする跛行は、診断が難しいです。 はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 肩関節の骨病変や軟骨下骨の異常およびOCDは、若馬で跛行の原因となることが報告されています。しかし、臨床現場では、ごくわずかな所見しか得られず、X線検査…

第一趾骨近位底側骨片の関節鏡視下除去23頭(Simonら2004年)

第一趾骨底側の骨片は、若齢馬で症状を伴わないOCのような症状としてみられる骨軟骨片もあれば、運動負荷が増大して付着する靱帯から受ける力によって裂離骨折を起こすこともあります。 後肢での発生が多いこの骨折に対し、スタンダードブレッド競走馬におけ…

近位種子骨軸側骨炎8症例(Dabareinerら2001)

文献でわかったこと 種子骨軸側の骨炎は、X線DP像での種子骨の透過領域に基づいて診断されます。また、超音波検査では種子骨間靭帯および種子骨軸側辺縁の骨の輪郭を評価することが可能です。 診断麻酔で球節内または指屈腱鞘内への麻酔を行って確定しました…

脛骨内側顆間隆起の骨折21症例(Rubio-Martinezら2020)

はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 脛骨顆間隆起の骨折は、X線検査において膝関節内の骨片として認識されます。この骨片の鑑別診断として、前十字靱帯の付着部裂離骨折がありますが、実は発症メカニズムが少し異なるかもしれません。 (adsbygoo…

近位種子骨軸側無菌性骨炎の臨床的・画像診断的特徴(Vanderperrenら2014)

はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 近位種子骨軸側の骨炎は感染性と無菌性に発生します。感染性の場合は穿孔性の外傷やフレグモーネなどにより汚染されたことが原因となります。一方で無菌性の場合は、内外の種子骨軸側を繋ぐ靭帯(掌側または…

副手根骨前面骨折と手根管腱鞘への影響(Minshallら2014)

文献でわかったこと 参考文献 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || []).push({}); 文献でわかったこと 副手根骨の骨折はまれですが、なかでも前面の完全骨折が最も多いとされています。副手根骨が前面で骨折した場合の多くは粉砕した骨片が発生し、手根管…

若齢馬における近位指節間関節背内側の骨軟骨片(Fjordbakkら2007)

はじめに 文献でわかったこと 参考文献 はじめに 近位指節間関節の骨片は、レポジトリ検査などでまれに見つかることがあります。 しかしながら、この骨片の臨床症状や競走成績に与える影響に関する調査は多くなく、判断が難しいことがあります。 (adsbygoogl…

化膿性滑膜炎に対する連続的滑液嚢内抗菌薬投与31症例(Lescunら2006)

はじめに 文献で分かったこと はじめに 化膿性滑膜炎は緊急疾患で、感染が見つかり次第、洗浄や抗菌薬投与を行うことが良好な予後に繋がると考えられています。 しかし、何らかの原因で発見が遅れたり、慢性化してしまった場合には、長期的な全身抗菌薬が行…

領域や疾患に関連した馬の顎関節円板の性質の違い(Cotaら2019)

顎関節は下顎骨関節面と頭骨下顎窩の関節で、その間には関節円板があり、関節機能に重要な役割を果たしています。 ヒトでは顎関節の異常にこの関節円板が関わっていることがわかってきていて、動物でも関連が疑われています。 大きな関節であるため関節円板…

近位種子骨軸側辺縁骨髄炎の7例(Winsterら1991年)

はじめに 文献で分かったこと 診断のために 参考文献 はじめに 近位種子骨は球節掌側に位置し、内と外に一つずつあり、近位には繫靱帯脚部、遠位には4つの種子骨靱帯が付着しています。 内と外の種子骨をつなぐ構造として、種子骨間靱帯があります。この靱帯…

第一指(趾)骨背側骨片除去後の競走成績(Colonら2000)

球節における第一指(趾)骨骨片骨折は競走馬で非常に多くみられる骨折で、多くはX線検査で診断されてきましたが、近年では超音波検査でより詳細に関節を観察して骨片が検出できることが示されています。 equine-reports.work (adsbygoogle = window.adsbygo…